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懐かしい同僚たちとの談笑は、胸が弾むほど楽しいひとときだった。
料理に舌鼓を打ちながら会話は次々と広がり、気づけば沙夜の周りには自然と同僚たちが集まっていた。
その輪の中で、沙夜は皆からの出産祝いの品を受け取った。
「沙夜さん、開けてみてください」
「ありがとう。何かしら?」
丁寧にリボンと包装紙を外し、箱の蓋を開けると、そこには有名ブランドのベビー用食器セットがきれいに収まっていた。
「まあ! なんて可愛らしいの」
「ふふっ、これなら実用的で長く使えますよね?」
「ええ。離乳食が始まったらすぐに使えるわ」
「おもちゃや服とも迷ったんですけど……宇佐美さんがこれが一番いいって言ってくれて……」
「子育て経験のあるママの意見は頼りになりますからね~」
沙夜は、皆の思いやりに胸が温かくなるのを感じていた。
「本当に嬉しい! 食器はまだ揃えていなかったから助かります。みんな、ありがとう」
和やかな空気が広がったそのとき、彗を寝かしつけていた山下が戻ってきて、明るい声で言った。
「さあ、そろそろデザートのマンゴータルトをお出ししますね。コーヒーも淹れましょうか」
「わあ! マンゴー! 私、マンゴー大好きなの」
「私もよ」
嬉しそうに声を上げる同僚たちに、沙夜は微笑みながら言った。
「山下さんのマンゴータルトは本当に絶品なの。いっぱい食べていってね」
「わぁ、嬉しい!」
「それでは、遠慮なく!」
「あ~、この素晴らしい景色に美味しい料理……なんて幸せなの~」
同僚たちの満ち足りた表情を見て、沙夜は胸を撫でおろした。
(やっぱり、来てもらってよかった……)
そう思えるのも、司と山下が支えてくれているからこそ。
沙夜はあらためて、二人への感謝で胸がいっぱいになった。
――その頃。
司が長い電話を終えた瞬間、ノックの音が響いた。
沙夜だと思い「どうぞ」と声をかけると、入ってきたのは沙夜ではなく、後輩の川原梨花だった。
司は特に驚いた様子もなく、ゆっくりと椅子から立ち上がった。
「君は……」
「お久しぶりです」
「以前、沙夜のことで忠告してくれた人だよね?」
「覚えていてくださったんですか? 嬉しい!」
梨花は満面の笑みを浮かべながらドアを閉め、書斎を興味深そうに見回しつつ司のデスクへ歩み寄った。
今日の梨花は、肩の露出したブラウスにミニスカートという大胆な装いで、銀行の制服姿とはまるで別人のようだった。
控えめな服装の同僚たちの中では、ひときわ目立っていた。
司は、その服装の意図をすぐに理解した。
これまで数多くの女性から言い寄られてきた経験があるからだ。
「それで、何か用かな?」
「私の忠告……全然伝わってないみたいだから。もう一度言いに来たんです」
「そういうことか。でも、君がどれだけ僕たちの仲を裂こうとしても無理だと思うよ」
「えっ……?」
「沙夜と僕は強い絆で結ばれている。彗が生まれてからは、さらに深くね。だから、君が茶々を入れても何も変わらないんだよ」
司のきっぱりとした言葉に、梨花は一瞬ひるんだ。
しかし、引き下がる気配はまったくない。
彼女は司のすぐそばまで歩み寄り、突然腕を回して抱きついた。そして、甘ったるい声で囁く。
「沙夜先輩は出産直後だから、あなたの相手をする余裕なんてないんじゃないですか? だったら……私がお相手しますよ?」
梨花は豊かな胸をぐいっと押し付けてくる。しかし司は表情ひとつ変えず、冷ややかに言った。
「君は何がしたいんだ?」
「もちろん、決まってるじゃない……」
梨花はさらに司の手を取り、自分の胸元へ導こうとした。
だが司はその手を強く振り払った。
「やめてくれ」
その一言で、司が誘惑に乗らないことを梨花は悟った。
ならば次の手段しかない――。
(今ここで声を上げて、襲われそうになったって騒げば、二人の仲はきっとぎくしゃくする……。そうよ、これしかない!)
梨花が声を上げようとしたその瞬間、再びノックの音が響いた。
司は素早く梨花の体を自分から引き離し、迷いなく「どうぞ」と返事をした。
突然距離を取られた梨花は、支えを失ってぐらりと体を揺らした。
入ってきたのは、司の会社のCFO・今村俊雄だった。
「社長、遅くなりました」
「おっ、来たか。料理がなくなるところだったぞ」
「すみません。道が混んでいて……。こちらの方は?」
露出の多い服装の梨花に目を留め、今村が尋ねる。
その視線は一瞬だけ鋭く、しかしすぐに柔らかな笑みに変わった。
――彼は司から見せられた写真で、すでに梨花の企みを把握していた。
だから、知らないふりをして演技している。
「沙夜の後輩の川原さんだよ」
「どうも、今村と申します」
今村はチャーミングな笑顔を向けた。
今村は背が高く整った顔立ちで、司にも引けを取らない存在感を持っている。
独身でありながら、女性に困ったことがないほど社内でも社外でも人気が高い。
司と少し違うのは、今村がかなりプレイボーイで、女性の心理を熟知している点だ。
梨花ほどの女性なら、夢中にさせることなど造作もない。
今日、司は梨花の悪だくみを阻止するために今村を呼んでいたが、早速その効果が現れ始めた。
梨花は、目の前のハンサムな男に完全に視線を奪われていた。
「ど、どうも……初めまして、川原です」
「綺麗な方ですね~。そういえば、結婚式で隣のテーブルでしたよね?」
「そうでしたね」
「またお会いできて光栄です」
梨花は緊張したように口数が減り、先ほどまでの挑発的な態度はすっかり影を潜めていた。
今はただ、今村に見とれているだけだった。
「今村君。彼女に案内してもらって、早く料理を食べて来いよ。本当になくなっちゃうぞ」
「それは困る! じゃあ川原さん、行きましょう」
今村は緊張気味の梨花の手を取り、リビングへ向かった。
梨花はその強引さに驚きつつも、まんざらでもなさそうだ。
ドアが閉まると、司は苦笑いしながらつぶやいた。
「あいつの本気の視線を浴びたら、すぐに堕ちるな……」
そう呟いて立ち上がると、司は念のために隠しておいた小型カメラを手に取る。
そして、満足げに口元を緩めた。
(世話になった先輩の夫に色仕掛けで迫ろうとした証拠……これがあれば、彼女をいくらでも追い落とせる)
カメラを引き出しにしまい、司は満足げに微笑みながら書斎を後にした。
コメント
16件
梨花怖しい😰まずは色仕掛けできましたね でも流石司さん 梨花の行動を見越してハンサムな今村さんと隠しカメラまで用意していたとは‼️ このあとどうやって追い詰めるのか早く読みたいです

やっぱ色仕掛けか😎 何が目的なのかなぁ💢 ムカつく‼️
やっぱりー‼️司さんの方が上手ですよね〜 今村さんも計画を知ってるよね☺️ ザマァが楽しみです😎