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楽しい食事会も終わりに近づいていた。
デザートを食べ終えた沙夜の元同僚たちは、満足げな笑みを浮かべながら玄関へ向かい、司と沙夜、そして山下へ丁寧に礼を述べてから帰っていった。
四人のうち二人は電車で帰るため駅へ向かい、梨花と宇佐美は方向が同じだったので、今村の車で送ってもらうことになった。
梨花は、あれ以来ずっと今村のそばを離れようとしない。
よほど彼のことが気に入ったのだろう。
(今日中に落とすつもりなのか……)
司は苦笑しながらそう思った。
もちろん梨花は、今村が司の指示で動いているなど夢にも思っていない。
「じゃあ、沙夜さん、育児頑張ってね」
「また彗ちゃんに会いに来ますね~」
「みんなありがとう。また遊びに来てね」
「「「はーい」」」
沙夜はにこやかに見送り、玄関が閉まるとほっと息をついた。
リビングへ戻ると、沙夜は司と山下に礼を述べた。
「素敵なおもてなしをしていただいて、ありがとうございました」
「沙夜も楽しめたようでよかったね」
「ほんと、賑やかで楽しかったですね~。お料理も喜んで食べてくださって、そりゃあもう嬉しかったですよ」
「山下さんのお料理は本当にどれも美味しかったわ。でも疲れたでしょう? 片づけは私がやりますから」
「とんでもございません、奥様。それに大丈夫ですよ。皆様がデザートを召し上がっている間に、ほとんど片づけましたから」
「でも……」
「沙夜、せっかく山下さんがそう言ってくれてるんだ。君も疲れてるんだから、少し休みなさい」
「そうですよ。明日からまた育児で忙しい毎日なんですから、体力を蓄えておかないと」
「すみません。じゃあ、ちょっと彗の様子を見てきますね」
沙夜はそう言って、彗が眠る寝室へ向かった。
司も一緒についてくる。
寝室に入ると、彗は天使のような寝顔で、すやすやと寝息を立てていた。
来客で疲れたのだろう。まったく起きる気配がない。
「ぐっすり眠ってる……」
「ええ、本当に」
「愛らしい顔をして……。本当に天使の寝顔だな……」
司が頬を緩めながら息子を見つめる姿を見て、沙夜の胸がじんと疼いた。
そして、気になっていたことを司に尋ねた。
「さっき……書斎でずいぶん時間がかかってたけど……。お仕事の方は大丈夫なの?」
沙夜は、司が書斎に入ってしばらくして梨花の姿が消えたことに気づいていた。
その瞬間、なんとなく嫌な予感がした。
梨花が司に何か仕掛けようとしているのではないか――女の直感でそう感じたのだ。
しかしすぐにインターホンが鳴り、司の右腕でもあるCFOの今村が訪れた。
沙夜が「司は書斎で電話中です」と伝えると、今村は「自分で行くから大丈夫」と言って一人で書斎へ向かった。
(今村さんが行ってくれるなら、もし梨花ちゃんがいたとしても大丈夫ね……)
そう思い、沙夜はリビングへ戻った。
ただ、あのとき何があったのかが気になる。
その後、今村が梨花の手を引いてリビングへ入ってきたのを見て、梨花が書斎にいたことは分かっている。
悶々と気になっていた沙夜は、勇気を出して司に尋ねることにした。
司は穏やかに答えた。
「うん。特に問題ないよ」
「そう……それならよかった。でも……梨花ちゃんと何かありました?」
直球の問いに、司は少し驚いたようだった。
「なんだ、気づいてたのか」
「はい……。梨花ちゃんが何か企んでいるのは、知ってましたから」
「そうか……。沙夜はどこまで知ってるの?」
沙夜は、自分の知る限りのことを話す決心をした。
結婚前から梨花がしつこく三国を勧めてきたこと。
梨花と三国が深い関係にあること。
沙夜が入院していた病院を梨花が探し当てて見舞いに来たこと。
そして、何かされるのではないかという不安を抱いていたこと――
すべてを伝えた。
聞き終えた司は一呼吸置いてから、寝室の椅子に腰かけ、沙夜にも座るよう促した。
「沙夜も、うすうす気づいていたんだね」
「はい……」
「いつから気づいていたんだ?」
沙夜は、あの夢の世界の話を司に話すべきか迷った。
その表情を見ていた司は、沙夜が何か隠していると感じ取ったようで、静かに言った。
「沙夜……僕のことを信頼して、すべてを話してくれないか?」
夫の真剣な表情を見て、沙夜は決心した。
(すべてを話してみよう……)
そう思い、あの不思議な体験の一部始終を司に語り始めた。
司は沙夜の話に真剣に耳を傾け、沙夜がすべてを話し終えたとき、驚いた表情を浮かべた。
「僕の母に……母に会ったっていうのは、本当?」
「ええ。おばあ様に見せていただいたアルバムの写真とまったく同じ方でした。私が困っていると、必ず現れて励ましてくださったんです」
司の瞳は、どこか潤んでいるように見えた。
沙夜は、あの歌のこともそっと口にした。
「私がこの世に戻ってくるとき、お母様は“きらきら星”を口ずさんでいました。とても優しい声で、何度も何度も……。そして別れ際、私に『あの子をお願いね』って言ったんです。あのときは意味が分からなかったけれど、今なら分かります。司さんのことを頼むわねって……そう言っていたんだと思います」
司は感動のあまり言葉を失い、ただ沙夜を見つめていた。
沙夜は続けた。
「あれが夢だったのか……それとも本当に違う世界へタイムリープしていたのか……今でも分かりません。でも私は、あの世にいるあなたのお母様や、私の亡き母に助けられて、この世界へ戻ってこられたんです。だから……私は一生をかけて、あなたと彗のことを守ろう……そう決めたんです」
沙夜の瞳から涙があふれた。
ずっと胸にしまっていた想いをようやく伝えられた安堵と、あの世で自分を支えてくれた人たちへの懐かしさが込み上げてきたのだ。
肩を震わせて泣く沙夜の隣に腰を下ろした司は、そっと腕を回し、彼女をしっかりと抱き寄せた。
そして、胸の奥から込み上げる思いを静かに押しとどめながら、穏やかな声で語りかける。
「沙夜、話してくれてありがとう。あの世で母や君のお母さんが僕たちを見守ってくれていると思うと、本当に励みになるよ。僕のほうこそ、これからは君と彗のことをしっかり守っていく。だから、僕についてきてくれるね?」
「もちろんです……」
沙夜は司の胸の中で大きくうなずいた。
司はそんな妻を愛おしそうに抱き寄せ、さらに腕に力を込める。
寝室の窓の外では、夕日がビルの合間にゆっくりと沈んでいく。
燃えるようなオレンジ色の空は、どこか神秘的で――
まるで司と沙夜の母たちがいるあの世界へと続いているかのように思えた。
コメント
30件
沙夜ちゃんも司さんもお互い尊重しあって言いづらいことも聞きづらいことも話ができて良かったね🌸 司さんはお母さんの話を聞けて感動だったし紗夜ちゃんも話を信じてくれた事に感動🥹コメ隊も感動🥹✨絆は揺るがない! そして梨花は今村さんに方向転換🤪 今村さーん、適当に煮るなり焼くなりして早く処分してくださーい🙅🙅♀️👋
司さんに話すシーンも感動しました😭 お母様との出会い、「きらきら星」が繋いだ司さんへの愛情を次は沙夜ちゃんへバトンタッチしてきっと幸せを願ってますね🥲話は変わりますが…今村さん曲者ですね😳梨花をどうやってやっつけるんでしょうか?期待しちゃいますよね🤭梨花の悪女正体をバラして下さい。今村さん…宜しくお願いします🙇♀️👍«٩(*´ ꒳ `*)۶»ワクワク
秘書室の宇佐美先輩と元同僚のお二人と久しぶりに楽しい時間を過ごして 沙夜ちゃん…良かったですね😊 山下さんの心のこもったおもてなし 最高でした🥰沙夜ちゃんの身体を気遣っての優しい思い遣りにも感動しました😭司さんも梨花の誘惑にも屈せずに 沙夜ちゃんへの愛を貫いて、彗君と3人の幸せを守っていくなんて…素敵です お部屋での二人の会話も沙夜ちゃんが タイムリープした時の出来事を全て 続きます🙏😊