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ドアが開く。
相談者はスマホを伏せてから言った。
「返信が遅いだけで、関係終わった気がする……」
蓮司は椅子を引く。
「どのくらいでそうなる」
「数時間とか。半日空くともう無理」
「相手の普段は?」
「普通に返ってくるときもある。早い日もある」
蓮司は座る。
「揺れに耐えられてないな」
相談者は視線を落とす。
「安定してないと落ち着かない」
少し間。
「今、何を根拠に判断してる」
「返信の速さ」
「それ一本?」
「……一本」
蓮司は机に指を置く。
「それだと毎回ブレる」
相談者は黙る。
「相手の状態は毎日違う。
速さは一番変動する部分だ」
「でも、遅いと不安になる」
「なるのは普通。
問題は“結論に使ってること”」
間。
「結論?」
「“遅い=距離ができた”って決めてる」
相談者は小さく頷く。
「勝手に決めてる……」
少し沈黙。
「じゃあどう見ればいい」
「指標を増やす」
「何を」
「会ったときの反応。
直近の会話の流れ。
約束が守られてるか」
相談者は考える。
「全部バラバラだな……」
「バラバラでいい。
一個で決める方が雑」
間。
「でも見てるのは結局スマホ。だから偏る」
相談者は苦笑する。
「分かる……」
少し沈黙。
「もう一つ」
「何」
「“遅い理由”を勝手に埋めてる」
相談者は一瞬止まる。
「……悪い方で」
「大体そうなる」
「忙しいとかもあるのに」
「見えないからな。
空白は不安で埋まる」
間。
「それ止める方法ある?」
「完全には無理」
相談者は肩を落とす。
「やっぱりか」
「ただ、“仮で置く”ことはできる」
「仮?」
「“今は見えてないだけ”って置いとく」
相談者は黙る。
「確定にしない」
「うん……」
少し沈黙。
「あと、もう一個ズレてるとこがある」
「何」
「返信を“関係の温度計”にしてる」
相談者は顔を上げる。
「違うの?」
「一部ではある。
でも全体じゃない」
間。
「温度は会ったときに一番出る」
相談者は考える。
「確かに、会うと普通なこと多い」
「それを無視して、
小さい指標で全部決めてる」
少し沈黙。
「なんかさ」
「何」
「不安になりたいわけじゃないのに、
自分で材料集めてた感じする」
「そういう動きだな」
相談者は小さく息を吐く。
「あと現実的な話」
「何」
「返信の速さって、相手の性格でも変わる」
「どういうこと」
「考えてから返すやつ、
通知溜めるやつ、
一気に返すやつ」
相談者は頷く。
「いる……」
「そこ無視して同じ基準で見てる」
間。
「じゃあ基準変える?」
「相手ごとに分ける」
「めんどくさいな」
「雑に不安になるよりマシ」
相談者は少し笑う。
少し沈黙。
「結局さ」
「何」
「待ってる時間が一番しんどい」
「それは変わらない」
「じゃあどうする」
「待ってる間に判断しない」
相談者は黙る。
「評価は“来てから”に限定する」
「来なかったら?」
「その時に考える」
間。
「先に考えても意味ない?」
「ない。材料がない」
相談者はゆっくり頷く。
ドアの前で立ち止まる。
「来る前に結論出さない」
「それでいい」
ドアが閉まる。
見えてない時間に、
意味を足しすぎてる。
情報がないところで出した結論は、だいたい外れる。
#読み切り