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#一次創作
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放課後。
空き教室。
日下部は制服のまま椅子に座っていた。
机の上には開きっぱなしの古典のノート。
やる気はどこかに置いてきた。
ドアが開く。
「お疲れ」
「……お疲れ様です」
生徒が入ってくる。
「今日、委員会?」
「いや」
日下部は古典のノートを閉じる。
「課題終わってないだけ」
「真面目ですね」
「追い込まれてるだけ」
少し笑って、生徒は座った。
日下部はノートを閉じる。
「で?」
生徒は少し迷う。
「二人だと話せるんです」
「うん」
「でも三人とか四人になると」
少し間。
「急に話せなくなるんです」
日下部は黙って聞く。
「一対一なら普通なんですよ。話題も出るし、沈黙もそんな気にならないし」
視線が落ちる。
「でも人数増えるとタイミング分かんなくなって、入ろうと思ったら他の人が話し始めて」
少し苦笑する。
「気付いたらずっと聞いてるだけです」
「で」
日下部が言う。
「帰ってから落ち込む」
生徒は止まる。
「……はい」
「『また何も喋れなかった』」
「はい」
「『つまらないやつって思われたかな』」
「はい」
「『もっと頑張ればよかった』」
「全部です」
生徒は笑う。
日下部も少し笑った。
「よくある」
短く言う。
「でも他の人って普通に入っていけるじゃないですか」
「そう見えるだけだろ」
生徒は顔を上げる。
「え」
「四人組って全員が均等に喋ってるか?」
少し間。
生徒は考える。
「……いや」
「二人が喋ってて、一人笑ってて、一人静か」
「結構あります」
「ある」
日下部は頷く。
「グループって常に全力参加する場所じゃない」
短く言う。
「聞いてる時間も普通にある」
生徒は黙る。
「でも、自分だけ喋ってない気がして」
「自分のことしか見えてないからな」
生徒は止まる。
「他人の沈黙は気にならない。でも自分の沈黙だけは」
少し間。
「やたら長く感じる」
生徒は苦笑する。
「めちゃくちゃあります」
窓の外から運動部の掛け声が聞こえる。
「あと」
日下部は言う。
「グループ苦手なやつって喋ることを仕事にしすぎ」
「仕事?」
「何か言わなきゃ、盛り上げなきゃ、気まずくしちゃダメ」
短く言う。
「背負いすぎ」
生徒は黙る。
「俺、毎回面接みたいになってました」
「友達だろ」
即答。
生徒は吹き出した。
「確かに」
「採用試験じゃない」
少し空気が軽くなる。
生徒は立ち上がる。
「なんか、グループって得意な人だけの場所だと思ってました」
「静かなやつも普通に混ざってる」
日下部は言う。
「案外な」
ドアが閉まる。
大人数の会話が苦手なのは、話す力がないからじゃない。
「ちゃんと参加しなきゃ」と思いすぎて、自分だけ勝手に試験を始めていることもある。
コメント
1件
ああ、これすごくわかります……。グループになると急に喋れなくなる感覚、めちゃくちゃ共感しました。「自分の沈黙だけやたら長く感じる」ってまさにそれですよね。日下部先生の「グループって全力参加する場所じゃない」「喋ることを仕事にしすぎ」って言葉に、すごく救われる気持ちになりました。静かな人も普通に混ざってるって、そう思えたら少し楽になれそうです。優しいお話をありがとうございます🌷