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白い庭に、淡い風が流れていた。
どこからともなく花びらが舞い降り、光を反射してきらめく。
それは、まるで“ふたりの再会”を祝福するかのようだった。
真白とアレクシスは、互いの手を繋いだまま、言葉を失っていた。
長い時間を越えてようやく戻ってこられたその場所――
もう何度、夢の中でこの瞬間を望んだか分からない。
アレクシスが、静かに息を吐いた。
「……こんな日が、本当に来るなんて思わなかった」
その声に、滲む震えを真白は感じ取る。
強く見える彼も、心の奥ではずっと怖かったのだ。
また失ってしまうのではないかと。
「君は、僕を探してくれたんだよね」
真白が言うと、アレクシスは少し照れたように笑った。
「探した。何度も、何度でも。
おまえがいない世界なんて、息をする意味すらなかった」
真白の喉が詰まる。
その言葉が痛いほど優しかった。
――前世で、アレクシスを庇って命を落とした真白。
アレクシスの魂が、この現実を越えてまで自分を追いかけてきた理由。
それはただの懐かしさでも、償いでもなく。
“生きる理由”そのものだった。
「アレクシス……」
真白は、指先で彼の頬に触れた。
温もりが確かにあった。
その瞬間、アレクシスはそっと真白の手を包み込み、低く囁いた。
「真白。今度こそ、君を離さない」
言葉が空気を震わせ、光の庭に響く。
それは、どんな神の誓いよりも真実だった。
世界がどう変わろうと、この言葉だけは消えない。
真白は、静かに微笑んだ。
「僕も……もう二度と、君を置いていかない。
君がどんな姿でも、どんな世界にいても、僕が見つける」
ふたりの声が重なった瞬間、庭の中央の花が一斉に咲いた。
白い花弁が金の光を帯び、空へと舞い上がる。
その光の中で、ふたりの姿が溶け合うように重なっていった。
「約束しよう」
「うん」
互いに言葉を交わしながら、彼らは過去と未来のすべてを抱きしめ合う。
そこにはもう、後悔も、赦しもいらなかった。
ただ、“存在の確かさ”だけがあった。
アレクシスは真白の耳元で囁いた。
「たとえまた世界が壊れても、俺はおまえを探す。
どんな運命でも、魂が覚えている限り」
「僕も……何度でも君を見つける。
だって、約束したから。何度生まれ変わっても、君を愛すると」
涙がこぼれた。
けれどその涙は、痛みではなく、光に溶けるように温かかった。
遠くで鐘の音が鳴った。
夢の世界に朝が近づいている。
夜明けの光が、少しずつ白い庭を染め始める。
「もうすぐ、朝が来るね」
真白の言葉に、アレクシスは小さく頷いた。
「ああ。でも……俺たちはもう離れない」
ふたりは再び手を握り、光の中で静かに微笑み合った。
そこには“別れ”の気配ではなく、次の再会へと続く静かな確信があった。
世界がどれほど壊れても、魂はまた巡り逢う。
それが、彼らの“約束の言葉”だった。
光が強くなり、庭全体が朝焼けの色に染まる。
花々の間を渡る風が、ふたりの名前を運んでいく。
――「真白」
――「アレクシス」
その声が重なり合った瞬間、ふたりを包む光が溶けるように消えていった。
そして残ったのは、永遠に交わされた言葉だけだった。
“今度こそ、君を置いていかない”