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「んっっ……」
突然唇を奪われた奈緒は、つい甘い吐息を漏らしてしまう。
省吾のキスは、奈緒の身体がとろけてしまいそうなほど甘く柔らかい極上のキスだった。
奈緒は頭が真っ白になり、何も抵抗できずにいた。
車内には、二人のリップ音だけが響いている。そしてその脇を時折車が追い越していく。
長い長いキスが続いた後、漸く省吾が唇を離した。そして省吾は奈緒の顔を覗き込んでからこう言った。
「奈緒が機嫌を損ねたら、これからはこうする事にしよう」
「…………」
奈緒はみるみる頬が紅潮するのがわかり、恥ずかしくて顔を上げる事が出来ない。
そんな奈緒を見て微笑むと、省吾は再び車をスタートさせた。
その後二人の乗った車は20分ほど走り続け、目的の湾岸エリアへ到着した。
レストランは中規模クラスの商業施設の中にあるようだ。
車が地下駐車場へ停まると、二人は車を出て地上へ向かった。
ずっと心臓がドキドキしていた奈緒は、外の空気を吸い漸く落ち着きを取り戻した。
一階へ出ると、省吾は奈緒をウッドデッキへ連れて行く。
その商業施設には広いウッドデッキがあった。
デッキに出た途端、奈緒が叫ぶ。
「海だわ! 潮の香りがする」
奈緒はすぐに海側の手すりまで駆けて行った。
手すりにもたれかかるようにして立った奈緒は、目の前に広がる海を見ながら大きく息を吸い込む。
優しい海風を頬に受けながら、奈緒は生き返るような気がした。
そんな無邪気に喜ぶ奈緒の事を、省吾は目を細めて見ている。
「レストランはデッキの一番奥にあるんだ。行こうか」
「はい」
そして二人は肩を並べてデッキを歩いて行った。
デッキの突き当たりにはレストランの入口が見えた。
月曜のまだ早い時間なので、店内は空いていた。
二人が中へ入るとスタッフが笑顔で出迎える。
「お席は店内になさいますか? それとも海が見渡せるデッキになさいますか?」
「デッキでお願いします」
省吾は迷わず答えた。
奈緒は海のすぐ傍で食事が出来ると知り嬉しかった。
二人は海に一番近いテーブルへ案内される。
席に着いた奈緒の目の前には、穏やかな海が広がっていた。
ちょうど海面が沈みゆく夕日に照らされキラキラと輝いていた。
「いい眺めだな」
「はい。海を見ながら食事が出来るなんて、最高です」
奈緒は嬉しくてニコニコしている。
奈緒の嬉しそうな顔を見た省吾は、連れて来た甲斐があったなと思う。
省吾はメニューを広げると奈緒に聞いた。
「せっかくだからコース料理にしようか?」
「はい」
「車だから俺は飲まないけど、奈緒だけ飲む?」
「私もやめておきます」
「遠慮しなくてもいいぞ? ちゃんと送ってくから」
「いえ、明日も仕事ですし」
「そう? じゃあソフトドリンクにするか」
省吾は手を上げてスタッフを呼ぶと、コース料理とジンジャーエールを頼んでくれた。
デッキは海のすぐ傍にあるので、時折岸壁に波が当たる音がちゃぷちゃぷと聞こえた。
その音色は耳に心地よくとても癒される。
「夏が近いから、こんな時間でもまだ明るいんですね」
「うん。今日の日没は7時頃かなぁ」
「じゃあちょうど日が沈むのが見えますね」
「だな。ちょうど良かった」
そう言っている間にも、太陽は徐々に高度を下げている。
その景色を前にすると、なぜか時が止まったかのような感覚になるから不思議だ。
その時、飲み物が運ばれて来たので二人は乾杯した。
キーンと冷えた炭酸が喉に心地良い。
「海は久しぶり?」
「はい。引っ越してからは全然見ていません」
「この前横浜に行った時も寄れなかったもんな」
奈緒は頷く。
奈緒の実家は千葉の海沿いの町にあった。
生まれた時から当たり前のようにいつも身近に海を感じていた奈緒は、海のない町にいるとたまに息が詰まる時がある。
だから今日久しぶりに海を見る事が出来た奈緒は、心がホッとするのを感じていた。
そしてここへ連れて来てくれた省吾に、感謝の気持ちでいっぱいだった。
コメント
16件
海に夕陽そして美味しいご飯❣️もう最高ですね^_^
きゃー!!甘い〜♥なおちゃん、落ちますよね💕省吾さんのおかげで私は、何回もこのページを読んだ🤣🤣SUVに乗って妄想癖だなぁ。
そんなん言うて~、わざと機嫌損ねさせて、また車チューするんやろ。 車チューした 深山省吾は策士かな