テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

夜。誰もいない部屋。

遥は無言のまま上着を脱ぎ、乱暴にベッドに体を投げ出した。


天井を見上げる。冷たい白。


(……バカだ)


目を閉じても、日下部の言葉だけが残っていた。


「壊れてるとか、そういうの、もう言うなよ」




まっすぐすぎて、うざい。

でも、耳から離れない。

体のどこかに、小さく火傷を残すみたいに、言葉が残っていた。


遥は自分の指先を見た。


日下部の制服を掴んだ、自分の手。

その手で、何人もの知らない男の腕に引かれてきた。

そのたびに、「何も感じないふり」を重ねてきた。


触られて、使われて、壊れたと信じ込んで。


(……ほんとに、“壊れてる”んじゃなかったら、どうすんだよ)


なぜか、そこだけが痛かった。





次の日の朝。教室。


日下部は教室に入るなり、遥の姿を探した。

奥の席に、いつも通り机に突っ伏している遥がいた。


でも、昨日と違ったのは──遥が、目を開けてこちらを見ていたことだ。


無表情。でも、どこか探るような目。


「……よ」


日下部が声をかけると、遥はわずかに目を細めた。


「……おまえ、さ」


その声は、教室のざわめきに紛れるほど小さかった。


「オレのこと、“そういうふう”に見てんの?」


「……それは、おれが決める」


そう答えた日下部に、遥は少しだけ口の端を上げた。


「……はは。そっか。じゃあ、また試していい?」


「おまえが試すなら、こっちは、毎回ちゃんと答える」


その言葉に、遥の顔が一瞬止まった。


ふいに、何かが揺れたような、ひどく静かな反応。


「──バカ」


遥はそう呟くと、また机に顔を伏せた。

でも、指先だけが、机の下で日下部の裾に、そっと触れていた。



無名の灯 恋愛編

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

17

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚