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真白はキッチンカウンターにノートPCを置いたまま、しばらく画面を見ていた。

手は動いていない。

ただ、視線だけが一点に留まっている。


「……真白」


アレクシスが声をかける。


「ん」

「止まってる」

「考えてる」

「それ、もう十分考えた顔」


真白は小さく息を吐いて、キーボードに触れた。

数行スクロールして、一行だけ消す。

そして、別の一行を打ち直す。


「今ので終わり?」

「一旦」

「一旦って便利な言葉だね」

「現実的な言葉」


真白はカップを手に取って、冷めかけたコーヒーを飲む。


「今日、在宅じゃなかったよね」

「本当はね」

「じゃあ、なんで?」

「急に仕様変わった」


アレクシスは眉を上げる。


「急に?」

「よくある」

「振り回される側?」

「振り回されるけど、放置もしない」

「……放置しないのは偉い」

「偉くない。間に合わなくなる」


真白は淡々としている。

愚痴でも自慢でもない、事実だけ。


「楽しい?」


アレクシスが聞く。

真白は少しだけ考えた。


「楽しいって言葉、あんまり使わない」

「じゃあ、嫌?」

「嫌でもない」

「難しいな」

「うん」


真白は画面を閉じ、椅子に深く座り直す。


「ちゃんと動くと、安心する」

「ゲーム?」

「仕事」

「完成したとき?」

「途中でも。ズレてないって分かると」


アレクシスは、なんとなく分かった気がして頷く。


「人より、仕組みと話してる感じ?」

「近い」

「人間関係は?」

「必要」

「好きではない?」

「嫌いでもない」


真白は言葉を選ぶ。


「人は揺れる。仕様も揺れる。でも、直せる」

「人も直す?」

「直せない」

「諦め?」

「受け入れ」


アレクシスは少し笑った。


「真白らしい」

「そう?」

「うん。冷たいようで、ちゃんと責任感ある」

「冷たいは余計」

「褒めてる」

「半分」


真白は肩をすくめる。


「仕事は、やれば終わる」

「関係は?」

「終わらせない前提」

「重いな」

「仕様だから」


アレクシスは吹き出した。


「それ、俺との関係にも適用?」

「当然」

「バグったら?」

「修正する」

「一行で?」

「無理なら、全部書き直す」


アレクシスは少しだけ真剣な顔になる。


「それ、時間かかるやつ」

「でも、やる」


真白はそう言って、もう一度PCを開いた。


仕事も、生活も。

雑なところと、譲らないところ。

その線引きは、彼の中では明確だった。

ひとつ屋根の下、コーヒーの香り。

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