テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ドアが開く。
相談者は少し気まずそうに言った。
「写真撮るとき、どこ入ればいいか分からない……」
蓮司は椅子を引く。
「集合のやつか」
「そう。みんな自然に並ぶのに、自分だけ一瞬止まる」
「で、どうしてる」
「端に行く。か、後ろ」
蓮司は座る。
「毎回?」
「ほぼ毎回」
少し沈黙。
「それ、“場所”の問題じゃない」
「え」
「“決めるタイミング”の問題」
相談者は眉を寄せる。
「タイミング?」
「最初の3秒で位置は決まる。
そこ逃すと余りになる」
相談者は黙る。
「多分、周り見てから動いてる」
「……見てる」
「だから遅れる」
間。
「じゃあどうすればいい」
「先に一歩入る」
「どこに?」
「空いてるとこでいい。
正解の位置なんてない」
相談者は少し戸惑う。
「でも被ったりしない?」
「する。
でもその場で微調整される」
少し沈黙。
「今までは?」
「“被らない位置”探してた」
「だから遅れる」
間。
「なんかさ」
「何」
「場所決めるだけなのに、めっちゃ考えてた」
「全員そうじゃない。
早い人は考えてない」
相談者は小さく息を吐く。
「あともう一個」
「何」
「写真の位置=立場、って思ってるだろ」
相談者は一瞬止まる。
「……ちょっと思ってる」
「関係ない。
たまたまそこに立っただけ」
間。
「でも真ん中のやつ目立つじゃん」
「写真ではな。
関係までは変わらない」
少し沈黙。
「端でもいい?」
「いい。
ただ“選んで端に行く”のと、“余って端になる”のは違う」
相談者は黙る。
「選べばいいのか」
「そう」
ドアの前で立ち止まる。
「次は止まらずに入る」
「それでいい」
ドアが閉まる。
位置は、与えられるものじゃない。
一歩目でほぼ決まる。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
100