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ドアが開く。
相談者は小さく言った。
「教室入った瞬間、どこ行けばいいか分からない……」
蓮司は椅子を引く。
「朝?」
「朝も、休み時間のあとも。
入った瞬間だけ止まる」
「で、どうしてる」
「とりあえず自分の席。
でも周りが固まってると、そこ行くのも変な感じする」
蓮司は座る。
「入口で一回止まるタイプだな」
相談者は苦笑する。
「バレてる……」
少し沈黙。
「それ、“場所”じゃなくて“最初の動き”で迷ってる」
「最初の動き?」
「教室に入ったあと、最初に何するか決めてない」
相談者は黙る。
「だから毎回その場で判断してる」
「……確かに」
間。
「じゃあどうすればいい」
「“一手目”を固定する」
「一手目?」
「入ったらまず何するか、決め打ち」
相談者は考える。
「例えば」
「席に行く。カバン置く。
それだけでいい」
「それだけ?」
「それだけで“止まる時間”が消える」
少し沈黙。
「でも周りが集まってるときは?」
「そのあと考えればいい」
「あとで?」
「一手目終わってから二手目を決める」
相談者は眉を寄せる。
「二手目?」
「話しかけるか、席に残るか、移動するか」
間。
「今までは?」
「入口で全部決めようとしてた」
相談者は小さく息を吐く。
「それで固まってたのか……」
少し沈黙。
「あともう一個」
「何」
「“どこ行けばいいか”じゃなくて、
“どこに行ってもいい”に変える」
相談者は一瞬止まる。
「……それ難しくない?」
「難しい。
でも事実はそう」
「決まってる場所ないのに?」
「ない。
勝手に決めてるだけ」
間。
「でも浮いたら嫌だ」
「だから一手目で席に行く。
そこは安全地帯になる」
相談者は黙る。
「拠点作ってから動くか」
「そう」
少し沈黙。
「なんかさ」
「何」
「入る前から負けてた感じする」
「入口で止まるとそうなる」
相談者は小さく頷く。
ドアの前で立ち止まる。
「とりあえず席行くって決める」
「それでいい」
ドアが閉まる。
迷うのは、選択肢が多いからじゃない。
最初の一手が決まってないだけだ。
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