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椅子に腰を下ろすなり、少女は机にノートを叩きつけるように置いた。
「……もう嫌。テストの点、また悪かった。絶対みんなにバカにされてる」
蓮司はノートをちらりと見て、口角をわずかに上げた。
「で、何点?」
「……四十点」
「お、いいじゃん。平均は超えてる」
「全然よくないです!」
大げさに肩を落とす彼女に、蓮司はペンをくるくる回しながら言った。
「なあ、みんなにどう見られてるか気にしてるけどさ。お前が思うほど、他人はお前の点数に興味ないと思うよ」
少女は顔を上げる。
「……でも」
「悔しい気持ちがあるのはわかる。けどそれは“バカにされたくない”からじゃなくて、“自分でももっとできる”って思ってるからだろ?」
一瞬、言葉を失い、少女は目を瞬かせた。
蓮司は小さく笑って続ける。
「だったら次は、ちょっとだけ頑張ってみればいい。完璧じゃなくていいんだよ。昨日より一問多く解けたら、それで前進。……それなら、誰にも笑わせない強さになる」
少女はしばらく黙っていたが、やがて小さく笑った。
「……蓮司くんって、意外と優しいんですね」
「意外と、ね。……でもここだけの話にしとけよ。俺の評判が狂うから」