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#読み切り
ruruha
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み う .
眠狂四郎
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#相方募集
ドアが開く。
相談者は席に座ると、少し照れくさそうに笑った。
「部屋の片付けしてたらさ、昔集めてたものが出てきたんだ」
蓮司は椅子を引いて座る。
「懐かしかったか」
「懐かしかった。でも、それ以上に『もう好きじゃないんだな』って思った」
少し間が空く。
「何だった」
「漫画とか、ゲームとか。昔は毎日触ってたのに、今は箱を開けようとも思わなかった」
蓮司は静かに聞いていた。
「捨てた?」
相談者は首を振る。
「捨てられなかった」
「何で」
「好きだった自分まで捨てる気がして」
蓮司は少しだけ目を細めた。
「なるほど」
相談者は苦笑する。
「別に今嫌いってわけじゃない。でも、昔みたいに夢中にはなれない」
「それが寂しい」
「そう」
静かな時間が流れる。
蓮司はゆっくり口を開いた。
「お前さ」
「何」
「好きって、ずっと同じ温度じゃなきゃ駄目だと思ってないか」
相談者は少し考える。
「思ってたかも」
「でも無理だ」
「無理?」
「毎日食べたいくらい好きだったものでも、何年か食べなければ生活は続く」
「うん」
「だから嫌いになったとは限らない」
相談者は黙る。
「じゃあ何なんだろ」
「役目を終えたのかもしれない」
少し間が空く。
「役目?」
「その時のお前を楽しませる役目」
「……」
「支える役目」
「……」
「夢中にさせる役目」
相談者は机を見つめた。
「終わったら駄目なのか」
「いや」
蓮司は首を横に振る。
「終わったから、次に進める」
少し沈黙が流れる。
「でもさ」
相談者は小さく笑った。
「昔の自分なら絶対喜んでたのになって思うんだ」
「例えば」
「新作が出ても、『へえ』で終わる」
「前なら?」
「発売日まで数えてた」
二人の間に静かな空気が流れる。
蓮司は言った。
「昔のお前は、その時ちゃんと楽しんだんだろ」
「うん」
「じゃあ、それで十分じゃないか」
相談者は顔を上げた。
「十分?」
「最後まで好きでいられなかったんじゃない」
「……」
「好きな時間をちゃんと過ごし切った」
相談者はしばらく何も言わなかった。
やがて小さく笑う。
「何か、その考え方いいな」
「好きだった時間まで消えるわけじゃない」
「そうか」
「今好きじゃないからって、昔の気持ちが嘘になるわけでもない」
相談者はゆっくり頷いた。
少し間が空く。
「逆にさ」
蓮司は続けた。
「また何年後かに急に好きになることもある」
相談者は笑う。
「あるかな」
「店で曲を聞いたとか」
「うん」
「たまたま見かけたとか」
「うん」
「それだけで戻ることもある」
「確かに」
静かな時間が流れる。
相談者は立ち上がった。
ドアの前で振り返る。
「好きじゃなくなったんじゃなくて、一緒に走り切っただけなのか」
蓮司は小さく頷く。
「そういう好きもある」
相談者は少しだけ晴れた顔で笑った。
「捨てなくてよかった」
「無理に残す必要もないし、無理に手放す必要もない」
相談者は静かに部屋を出ていった。
ドアが閉まる。
昔好きだったものを、今は好きじゃなくなってしまうことはある。
でも、好きだった時間までなくなるわけではない。
その時間は確かに自分の一部で、今の自分までつながっているのかもしれない。
コメント
1件
ああ、これすごく沁みました……。好きだったものを好きでい続けなきゃいけないって、無意識に自分にプレッシャーかけてることありますよね。「好きだった時間を過ごし切った」っていう蓮司くんの言葉、すごく優しくて、ちゃんと救われる感じがしました。捨てるのも無理に残すのも正解じゃなくて、その時の自分の一部としてそっと置いておけるんだなって。23話、じんわり心に残るいい回でした🌷