テラーノベル
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冷たい床に膝を抱えて座る。息は白く、しかし空気は重く、胸の奥に鈍い圧力がたまっていく。
目を閉じても、漆黒の空間が胸まで押し寄せる。
遠くで風が金属にぶつかる音。
木の枝が窓の小さな隙間に触れる音。
すべてがやけに大きく、無意味に鮮明に聞こえる。
現実なのか、幻なのか、わからなかった。
「……おい、起きてるか」
声が聞こえた気がした。
でも、倉庫の外には誰もいない。
声は自分の心が作ったものかもしれない。
それでも、胸をかきむしるように、恐怖が押し寄せる。
壁を手で探る。
ざらついたコンクリートの感触が指先を刺す。
冷たい風が首筋をかすめるたび、皮膚が縮む。
体が動かない。
呼吸だけが、辛うじて自分の存在を示す。
耳の奥で、笑い声がひびく。
結城の声――弟に触れたことを許せない、あの軽蔑と怒りが、空気に染みついている。
「……あんなやつ、どうでもいいのに」
自分の意識が、声の一部だと錯覚する。
震える手で顔を覆う。
涙か、冷たい汗か、わからない液体が頬を伝う。
孤独と寒さが同時に身体を蝕む。
意識が途切れそうになるたび、耳元で囁かれる幻の声。
「もっと痛めつけてやればよかった」
「誰もあいつを助けない」
心臓が凍りつく。
胸の奥で、恐怖と自己嫌悪が絡み合う。
自分は弱い。
何もできない。
それでも、生きている。
その矛盾に、痛みだけが残る。
気づけば、時間の感覚が溶けていた。
夜は深いのか、明けかけているのか。
倉庫の闇は、どこまでも自分を包み込む。
手を伸ばしても、出口は遠く、逃げ場はない。
息を整えようとしても、喉が痛く、声は出せない。
身体も心も、完全に自分のものではない感覚に、涙がまた溢れた。
「……まだ、誰も、来ないのか」
震える声は、床に吸い込まれる。
応答はない。
ただ、冷たい空気だけが、孤独と恐怖を増幅していく。
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