テラーノベル
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ドアが開く。
「……失礼します」
「どうぞ」
生徒は入ってきて座る。
今日は最初から落ち着かない。
指がずっと制服の袖を触っている。
「……あの」
少し止まる。
「俺、同性が好きなんですけど」
日下部は表情を変えない。
「それがクラスにバレて」
視線が落ちる。
「毎日いじられるんです」
教室の空気を思い出したみたいに、声が少し固くなる。
「“今日も会いに行くの?”とか。
“あいついるじゃん”とか」
短く息を吐く。
「笑いながら言ってくる感じで」
少し間。
「無視してるんですけど、何回も来るし。
言い返そうとしても、うまく出なくて」
手が止まる。
「なんか、こっちが反応したら余計面白がられそうで」
日下部は少しだけ間を置く。
「“ネタ化”されてるな」
生徒は小さく頷く。
「……はい」
「本気で殴ってくる感じじゃない。
でも、毎日削ってくるタイプ」
短く言う。
生徒は黙る。
「まず」
日下部は視線を向ける。
「好きになること自体は、別におかしくない」
生徒は少し止まる。
「……でも、クラスだと変な空気になります」
「なる場所はある」
はっきり言う。
「中高は特に、“違う”だけで目立つことあるから」
生徒は黙る。
「じゃあ、どうすればいいですか」
声が少し低くなる。
「毎日しんどいです」
日下部は少し考える。
「まず、“全部一人で受ける形”を減らす」
生徒は顔を上げる。
「……え」
「担任でも、保健の先生でも、一人でいい」
短く言う。
「大人側に共有する。言える範囲で」
生徒は少し迷う。
「でも、“告げ口”みたいになりません?」
「もう十分ライン越えてる」
はっきり返す。
「からかわれてる側が、一人で耐える必要はない」
生徒は黙る。
「あと」
「はい」
「毎回ちゃんと受け流そうとしなくていい」
日下部は言う。
「……どういうことですか」
「無視できない日があって普通」
短く言う。
「傷つく方が自然だから」
生徒は少し止まる。
「俺、気にしてるのバレたくなくて平気なフリしてました」
「それ続けると、余計しんどい」
短く返る。
「じゃあ、言い返した方がいいんですか」
日下部は少し間を置く。
「“勝とう”としない方がいい」
短く言う。
生徒は顔を上げる。
「笑い取る目的で来てるやつに、正論ぶつけても止まらないことある」
「じゃあ無理じゃないですか」
少し声が強くなる。
「だから、“反撃”より“切り分け”」
日下部は続ける。
「関わる相手を分ける。
安全なやつと、距離置くやつを」
生徒は黙る。
「今は、クラス全体が世界になりすぎてる」
短く言う。
「でも、学校って本来もっと狭く切っていい」
生徒はゆっくり息を吐く。
「……なんか、自分が変だからこうなってると思ってました」
「違う」
はっきり返す。
「“違い”を雑に扱って笑ってる側の問題も大きい」
生徒は少しだけ目線を上げる。
立ち上がる。
ドアの前で止まる。
「誰にも言えなかったです」
「一人で抱えるには重い話だからな」
短く返る。
ドアが閉まる。
“好き”そのものより、それを勝手に消費されることの方が、人を削る。
#お悩み相談室
コメント
3件
ありがとうすぎる!! 考え方が俺とはもう間逆すぎて😭 とにかくありがとう!!満足しました!!!!