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放課後の教室の一角。 蓮司の机に、ためらうように一人の女子が腰を下ろした。髪は整っているし笑顔も保っている。でも、その指先は机の端をぎゅっと握りしめていた。


「……ずっと、彼の彼女の相談を聞いてるんです」


唐突な言葉だった。


「ん?」


「友達なんです、彼女が。で、その彼氏のことも知ってて……でも、私、その彼が好きなんです」


蓮司は眉をひそめず、ただペンを回す。


「へえ。で、何を相談したいの?」


「やめられないんです。応援してるふりして、内心ずっと奪いたいって思ってて……それが、嫌で」


笑いながら言うその声は、かすかに震えていた。


「嫌ならやめれば」


「……そんな簡単じゃないですよ」


「簡単だよ。やめるか、やるか。中途半端が一番苦しい」


彼女は視線を落とす。


「もし奪ったら……私、最低ですよね」


「最低って、自分で思ってる時点でブレーキはかかるだろ。でも、止まれないのは、もうちょっと落ちたいって思ってるからじゃないの」


静かな空気が二人の間に流れた。蛍光灯の音がやけに大きく響く。


「……そうかもしれない」


「だったら、落ちればいい。底まで行けば、もう上がるしかない」


彼女は苦く笑う。


「そんな簡単に言わないでください」


「簡単だよ。俺は当事者じゃないから」


淡々と返す蓮司の顔に、わずかに冷たさが混じる。


「でもな、ひとつだけ言っとく。奪うにしろ諦めるにしろ、自分で選んだって証拠だけは残せ」


「証拠……」


「誰かのせいにして動いたら、その後ずっと引きずるから」


彼女はしばらく黙り、机の木目を指でなぞった。


「……もし私が、奪うほうを選んだら」


「そのときは、お前の中で“最低”を超えろ。それくらいじゃないと、ただの裏切りで終わる」


言葉が胸に刺さったのか、彼女は小さく息を吐き、立ち上がった。


「……ありがとう。怖いけど、ちゃんと考えます」


「おう。考えるのはタダだしな」


廊下に出た彼女の背中を、蓮司は目だけで追った。

その表情には、助ける気も、突き放す気もない。ただ、彼は彼女がどっちに落ちるのか、少し楽しみにしているように見えた。



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