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椅子に座るなり、少年は肩を落とし、ノートに書きなぐった文字を見つめた。
「……何をやっても、すぐにうまくいかなくて……疲れちゃうんです」
蓮司はペンをくるくる回しながら、眉をひそめて見つめる。
「すぐにうまくいかない、な。まあ、当たり前だぞ」
少年は顔を上げ、訝しげに蓮司を見た。
「……当たり前、ですか?」
「当たり前だ。何もかも最初から上手くできる人間なんていない。
努力が積み重なるからこそ、結果が生まれるんだ」
少年は視線を落とす。
「でも、やってもやっても、意味がないように思えて……」
蓮司は机に肘をつき、少し微笑んだ。
「意味がない、ってのは思い込みだな。小さな努力は、すぐには見えない形で積み重なってる。
今は気づかなくても、必ず自分の力になってるんだ」
少年の目がわずかに輝く。
「……そうかもしれません」
「ほら、例えば今日ノートに書いたこと。明日、ちょっと覚えているかもしれない。
その『ちょっと』が、1年後には大きな差になるんだぞ」
少年は少し笑った。
「1年後ですか……」
「ああ。焦る必要はない。大事なのは、毎日少しでも積み重ねること。
一歩ずつでも前に進めば、気づいたときには随分遠くまで来てる」
少年は深く息をつき、ノートを握りしめた。
「……わかりました。今日も少しだけ、やってみます」
蓮司はペンを回しながら、静かに頷いた。
「それでいい。大きな成功よりも、小さな努力の積み重ねが、結局は自分を強くするんだ。
無理に急がなくていい、少しずつでいい」