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#闇
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蒼蔴
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シュメール
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ドアが開く。
相談者は椅子に座ると、少し困ったように口を開いた。
「仲直りしたんだけどさ」
蓮司は向かいに座る。
「よかったじゃん」
「……それが、よく分からない」
「何が」
「喧嘩する前みたいに話していいのか分からない」
蓮司は少し首を傾げる。
「仲直りしたんだろ」
「した」
「じゃあいいんじゃないか」
「でも、一回あんなこと言われたら、前と同じには戻れない気がする」
少し間が空く。
「向こうは普通にしてる?」
「してる」
「お前は?」
「普通にしようとしてる」
「できてない?」
相談者は苦笑した。
「変に気を遣う」
「何を?」
「また怒らせないかな、とか。前みたいに冗談言って大丈夫かな、とか」
蓮司はしばらく黙っていた。
「仲直りって、喧嘩する前の状態に戻ることだと思ってる?」
相談者は少し考える。
「……そうなのかな」
「だったら苦しいな」
「何で?」
「一回起きたことを、なかったことにしようとしてるから」
相談者は黙る。
「仲直りしたからって、記憶まで消えるわけじゃない」
「うん」
「だから、前と同じようにできなくてもおかしくない」
「じゃあ、仲直りした意味は?」
蓮司は少し考えた。
「前と同じになるためじゃない」
「じゃあ何?」
「喧嘩したあとでも、もう一度関係を作り直せるってことじゃないか」
相談者は顔を上げた。
「作り直す?」
「前と同じじゃなくてもいい」
「でも、ちょっと距離ができた気がする」
「それも今の関係だろ」
静かな時間が流れる。
相談者は机の上に視線を落とした。
「前みたいに戻れないと、仲直り失敗したみたいに思ってた」
「戻る必要はない」
「じゃあ、どうすればいいんだろ」
「今の相手を見ればいい」
「今の?」
「喧嘩の前の相手でも、喧嘩した時の相手でもなく」
蓮司は少し間を置く。
「仲直りしたあとの相手」
相談者は黙っている。
「相手が普通に話しかけてくるなら、少しずつ普通に返してみる」
「また何かあったら?」
「その時は、その時だ」
「怖いけど」
「怖いままでも話せる」
相談者は小さく笑った。
「何か、仲直りってゴールじゃないんだな」
「むしろ再開地点かもしれない」
少し間が空く。
「前と同じ関係を取り戻すんじゃなくて」
相談者はゆっくり言う。
「今度は今の二人で関係を作る」
蓮司は頷いた。
「それでいい」
相談者は立ち上がった。
ドアの前で少し振り返る。
「明日、普通に話してみる」
「無理に前と同じにしなくていい」
「分かった」
相談者は部屋を出ていった。
ドアが閉まる。
仲直りしたのに、前みたいに笑えない。
前みたいに冗談を言えない。
そんな自分を、「まだ許せていないからだ」と決めつけなくてもいい。
一度変わった関係は、元に戻すのではなく、そこから新しく作っていくこともできる。
コメント
1件
ああ、このエピソード、すごく沁みました……。蓮司さんの「仲直りはゴールじゃなくて再開地点」って言葉、その通りだなって思いました。一度変わった関係を「元に戻そう」とするから苦しくなるんだよね。でも「今の相手」を見て、そこから少しずつ作り直していく――そう言ってもらえるだけで、読んでるこっちも肩の荷が下りる気がしました。相談者の「明日、普通に話してみる」って最後の決意が、ほんとにあたたかくて。応援したくなりました🍀