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日下部の相談室3

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日下部の相談室3

33 - 第33話 仲いいはずなのに、気を使い続けてしまう

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2026年03月19日

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放課後。

ドアが軽くノックされる。


「どうぞ」


入ってきた生徒は椅子に座ると、少しだけ間を置いて話し始めた。


「仲いいはずなんです」


日下部は黙って聞く。


「結構一緒にいるし、向こうも普通に話してくるし、周りからも“仲いいよね”って言われるんですけど」


指先が机の端をなぞる。


「ずっと気を使ってる感じがあって」

「どんなふうに」

「話す内容とか、タイミングとか。変なこと言ってないかとか、今これ言っていいのかとか、ずっと考えてる」


少し苦笑する。


「会話終わったあとも、“あれ大丈夫だったかな”って振り返ったり」


日下部は頷く。


「楽ではないな」

「はい」


短く答える。


「一緒にいる時間は長いのに、全然慣れない感じがして」


視線を落とす。


「仲いいって言っていいのか分からなくなるんです」

「相手はどう見える」

「普通です。気を使ってる感じもあんまりなくて、自然に話してる」


少し間を置く。


「だから余計に、自分だけおかしいのかなって」


日下部は少し考える。


「二つ考えられる」

「二つ」

「一つは、その関係が“安心できる場所”じゃない」


生徒は顔を上げる。


「安心できない?」

「嫌いとかじゃなくて、評価される感じが強い。だから気が抜けない」


生徒はゆっくり頷く。


「……それ、あるかもしれないです」

「もう一つは」


日下部は続ける。


「お前の側の癖」

「癖」

「嫌われないように調整し続ける癖」


生徒は少し黙る。


「それ、直らないですか」

「完全には消えないかもな」


日下部は言う。


「でも減らすことはできる」

「どうやって」

「一回だけ、少し雑にする」


生徒は戸惑う。


「雑?」

「言い方を柔らかくしすぎないとか、沈黙を埋めすぎないとか。全部完璧にやろうとしない」


生徒は考える。


「それで嫌われたら?」

「そのときは、元々それくらいで崩れる関係だったってこと」


静かに言う。


「仲いい関係は、多少雑でも続く」


生徒は少し息を吐く。


「ずっと気を張ってるの、疲れます」

「だろうな」

「でも抜くの怖いです」

「最初はみんなそう」


日下部は続ける。


「だから少しだけでいい。全部じゃなくて、一回だけ」


生徒は頷く。


「それで様子見る感じですか」

「そう」

「変わらなかったら?」

「少しずつ広げる」


生徒は立ち上がる。


「……やってみます」


ドアの前で振り返る。


「仲いいのに気を使うのって、変じゃないんですね」


日下部は答える。


「珍しくはない」


少しだけ間を置く。


「ただ、ずっと続くとしんどい」


生徒は小さく頷いた。

ドアが閉まる。


仲の良さは、時間だけで決まらない。

気を抜けるかどうかで、だいぶ変わる。

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