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放課後。
教室の後ろの扉が静かに閉まる。
「ここって、誰でも来ていいんですよね」
日下部は顔を上げる。
「追い返したことはない」
生徒は少しだけ笑って、前の席に座る。
少し間。
「グループでいるとき」
「うん」
「自分だけ、ちょっと温度が違う気がして」
日下部は急がない。
「どう違う」
「みんなが100で盛り上がってるとき、自分は70くらい」
机に視線を落とす。
「楽しくないわけじゃないんです」
「うん」
「でも、同じテンションじゃない」
静か。
「合わせようとすると疲れるし、合わせないと浮く」
「どっちも消耗するな」
「はい」
即答。
「笑ってるけど、どこか冷静で」
少し迷ってから言う。
「これ言ったら変ですけど、みんなが騒いでるの見て、ちょっと引いてる自分がいる」
日下部は頷く。
「引いてる自分が嫌か」
「……ちょっと」
「冷たいって思う?」
「はい」
沈黙。
日下部は椅子の背にもたれる。
「全員100だと、たぶん壊れる」
「え」
「誰かが70で見てるから、バランス取れる」
生徒は瞬きをする。
「でも、そういう役って目立たないじゃないですか」
「目立たないな」
あっさり。
「でも必要だ」
短く言う。
「自分の温度を無理に100に上げると、あとで一気に落ちる」
生徒は黙る。
「家帰って、急にどっと疲れたりしないか」
少し驚いた顔。
「……します」
「それだ」
静か。
「温度が違うのは、ズレじゃなくて特性だ」
「特性」
「全員同じテンションで生きてない」
一拍。
「ただな」
日下部は視線を合わせる。
「ずっと“外から見てる側”にいると、本当に外に固定される」
生徒の肩が少し強張る。
「じゃあどうすれば」
「たまにだけ、自分から笑え」
「え」
「無理に100にしなくていい」
短く言う。
「でも0にもするな」
沈黙。
「70のまま、一回だけ自分から入れ」
生徒は考える。
「それで浮いたら」
「そのグループは合ってない」
はっきり。
教室は静かになる。
「温度が違う=間違いじゃない」
一拍。
「でも、自分を下げすぎると消える」
生徒はゆっくり立ち上がる。
「……ちょっと楽になりました」
「ならいい」
ドアの前で止まる。
「70の人間でも、いていいですか」
日下部は淡々と言う。
「むしろ70がいないと、100は暴走する」
ドアが閉まる。
温度が違うのは孤立の証拠じゃない。
ただ、立ち位置が少し違うだけだ。
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