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「……別に、寂しいわけじゃないし。けど……。あの子たちが私抜きで笑ってると、なんか……変な気分になるんだよね」
声のトーンはあくまで軽く、笑っている。けれど、指先だけがぎゅっと握られていた。
「ふーん」
蓮司はソファにもたれたまま、煙草の火をもてあそぶようにライターを回した。
「寂しくないのに寂しがるなんて、器用なことするなあ」
「やめてよ、そういうの」
「どーいうの?」
「なんか、揶揄ってくるやつ」
「事実でしょ。お前、傷つかない風の仮面かぶってるだけで、すっげえ打たれ弱いもんな。だから面倒くさいんだよ、あんたみたいな陽キャ風」
女の子は口をへの字に曲げたまま、何も言い返さなかった。
「でもな」
蓮司の声が一段低くなった。
「本当に強いやつって、そんなふうに自分の“弱いとこ”気づいてる奴なんだよ。言わないだけで、見てんだろ、自分のこと」
女の子の目が、わずかに揺れた。
「だからまあ、今日ここに来ただけで、そこらの量産型友達より百倍マシ。俺、そういうのは結構好きだよ」
「……あんた、ちょっとムカつくけど、ちょっとだけ優しいね」
「うん、よく言われる。“ちょっとだけ”ってとこ、ちゃんと押さえてくる辺り、あんたほんと器用」
女の子はようやく、心の底から笑った。
――ひどく不安定で、でもちゃんと、生きてる顔だった。