TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

表示が「3」で止まったまま、動かない。

小さな揺れのあと、静かになった。


真白は壁に背を預ける。


「……止まった?」

「止まったね」


アレクシスが非常ボタンを見る。

押す前に、少しだけ真白を見る。


「押す?」

「押して」


通話が繋がる。

点検中らしい。数分で復旧する、と。


数分。

狭い箱の中では、少し長い。

真白は腕を組む。

視線は扉。


「こういうの、嫌い?」

「別に」

「顔が嫌いって言ってる」

「言ってない」


でも、呼吸が少し浅い。

アレクシスは何も言わない。

ただ、壁の鏡に映る真白を見る。


閉じた空間。

暖房の残り香。

機械の微かな音。


「さ」


真白が急に言う。


「ん?」

「もし長く止まったら」

「うん」

「ここで一晩とか」

「ない」

「例え」


アレクシスは少し考える。


「水はない」

「自販機もない」

「座れない」

「最悪」


少し沈黙。


「……でも」


真白が続ける。


「一人じゃないなら、まあ」


そこで言葉を切る。


アレクシスはその続きを拾わない。

ただ小さく頷く。


わずかに振動。

エレベーターがゆっくり動き出す。


「ほら」

「早い」


表示が「4」に変わる。


扉が開く。

外の廊下の空気が入る。

少し広い。

真白は一歩出て、振り向く。


「……押してくれてありがと」

「ボタン?」

「うん」


何のことか分からないふりをする。


廊下を歩き出す。

距離は普段と同じ。

でも、さっきより少しだけ歩幅が揃っている。

ひとつ屋根の下、コーヒーの香り。

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

36

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚