表示が「3」で止まったまま、動かない。
小さな揺れのあと、静かになった。
真白は壁に背を預ける。
「……止まった?」
「止まったね」
アレクシスが非常ボタンを見る。
押す前に、少しだけ真白を見る。
「押す?」
「押して」
通話が繋がる。
点検中らしい。数分で復旧する、と。
数分。
狭い箱の中では、少し長い。
真白は腕を組む。
視線は扉。
「こういうの、嫌い?」
「別に」
「顔が嫌いって言ってる」
「言ってない」
でも、呼吸が少し浅い。
アレクシスは何も言わない。
ただ、壁の鏡に映る真白を見る。
閉じた空間。
暖房の残り香。
機械の微かな音。
「さ」
真白が急に言う。
「ん?」
「もし長く止まったら」
「うん」
「ここで一晩とか」
「ない」
「例え」
アレクシスは少し考える。
「水はない」
「自販機もない」
「座れない」
「最悪」
少し沈黙。
「……でも」
真白が続ける。
「一人じゃないなら、まあ」
そこで言葉を切る。
アレクシスはその続きを拾わない。
ただ小さく頷く。
わずかに振動。
エレベーターがゆっくり動き出す。
「ほら」
「早い」
表示が「4」に変わる。
扉が開く。
外の廊下の空気が入る。
少し広い。
真白は一歩出て、振り向く。
「……押してくれてありがと」
「ボタン?」
「うん」
何のことか分からないふりをする。
廊下を歩き出す。
距離は普段と同じ。
でも、さっきより少しだけ歩幅が揃っている。






