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夜。
真白はスマホを伏せた。
画面には、送ったメッセージ。
既読がつかない。
いつもならすぐ返る。
短くても、何かしら。
今日は、ない。
別に、怒っているわけじゃない。
そう言い聞かせる。
でも、画面をまた見る。
まだ。
部屋の時計が進む。
音がやけに大きい。
玄関の音。
ドアが開く。
「ただいま」
いつも通りの声。
真白はソファに座ったまま。
「遅い」
「ごめん。打ち合わせ伸びて」
コートを脱ぐ。
靴を揃える。
普通の動き。
「連絡」
「ごめん。電池切れてた」
そう言ってスマホを見せる。
黒い画面。
真白はそれを見る。
視線を外す。
「別に」
「怒ってる?」
「怒ってない」
短い。
でも硬い。
アレクシスは少し近づく。
距離を測るみたいに。
「心配した?」
「してない」
一拍。
「……少し」
目は合わせない。
アレクシスは、そこで少しだけ笑う。
嬉しそうにじゃない。
困ったように。
「ごめん」
それだけ。
真白は立ち上がる。
すれ違う。
少し肩が触れる。
「次は」
「うん」
「一言」
足を止める。
「わかった」
そのままキッチンへ行く真白の背中を、アレクシスは見ている。
しばらくして、後ろから声。
「……充電器、どこ」
少しだけ弱い声。
真白は振り向かずに答える。
「棚の上。右」
「ありがと」
間。
真白が言う。
「……帰ってきたなら、それでいい」
小さい。
でもはっきり。
アレクシスは何も言わない。
ただ、少しだけ近づく。
今度は、ちゃんと距離を詰める。
真白は避けない。
刺激は小さい。
でも、確かに残る。