テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

放課後の相談室に、野球部のジャージを着た男子が入ってきた。ドアを閉める音がやけに重い。


「……こんばんは」


疲れた声。肩で息をしている。


「おつかれ。どうぞ」


日下部は椅子を示す。


男子は腰を下ろし、両手を膝の上で組み合わせながら言った。


「部活、もうやめたいんです。

でも言えない。

仲間も先輩も、いい人ばっかりで……裏切るみたいで怖い」


日下部はゆっくりうなずく。


「“嫌い”になったわけじゃないのに、

自分の心が別の方向向いてる感じ?」


「そう。

練習中も頭が空っぽで。

でも行かないとって思って、毎日無理してる」


日下部は少し笑って言った。


「やめたい気持ちって、悪いことじゃないよ。

終わりにしたいって思うのは、

次を選ぼうとしてる証拠だろ」


男子は目を伏せ、


「でも……迷惑だと思う」


「迷惑って、誰の?

先輩や仲間は“お前が楽しく野球してる”前提で見てるだけだ。

本当の自分を隠して続けるほうが、

ずっと後でしんどい」


男子は唇をかみしめ、しばらく沈黙した。

窓から射し込む夕陽が、ジャージの袖に赤く反射する。


「……怖いけど、話してみようかな」


「それが一番だと思う」


日下部は穏やかに言った。


「理由を全部説明しなくてもいい。

“自分のこれからを考えたい”で十分だから」


男子は小さく息を吐き、

「ありがとうございます」と立ち上がった。


ドアが閉まると、相談室は再び静かになった。

夕暮れの光が薄れていく中、

日下部は机に頬杖をつき、

その背中にそっと心の中でエールを送った。



この作品はいかがでしたか?

36

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚