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優しい夫と可愛い息子――三人で過ごす毎日は、沙夜にとってかけがえのない幸せそのものだった。
夜、寝室のベビーベッドで彗が泣き出すと、沙夜は司を起こさないように素早く息子を抱き上げ、リビングへ移動する。
窓辺で彗をあやしていると、しばらくして司が眠そうな顔でやって来る。そして、必ずこう言うのだ。
「君は寝ていなさい。僕が寝かしつけるから」
「でも……あなたは明日お仕事が……」
「少しくらい寝不足でも平気だよ。それより、沙夜の体の方が心配なんだ」
司は決まってそう言い、沙夜の腕から彗を受け取ると、すぐに優しくあやし始める。
父親のたくましい腕に抱かれると、彗は安心したのかすぐに泣き止み、やがて司の瞳を見つめながらうとうとと眠りに落ちていく。
そんな夜が続き、沙夜は安心してぐっすり眠れる日々を過ごしていた。
司がここまで子供好きだとは、思いもしなかった。
休みの日には彗のそばを片時も離れず、楽しそうに話しかけている。
父親との触れ合いが増えるにつれ、彗は司の姿が見えなくなるだけで泣き出すこともあるほどだった。
父と息子の絆がこんなにも強く結ばれるとは思っていなかった沙夜は、驚きと同時に胸が温かくなるのを感じていた。
その日、家政婦の山下が夕食の下ごしらえをしている最中、沙夜はその手伝いをしていた。
ダイニングテーブルで絹さやの筋を取っていると、山下がふと笑みを浮かべて声をかけてきた。
「旦那様は坊ちゃんにメロメロですね~」
「ふふ、本当にそうね」
「あんなにお忙しい方なのに、家にいるときは文句ひとつ言わず坊ちゃまのお世話をされて……。息子さんを心から愛してらっしゃるんですね~。あ、もちろん奥様のことも!」
「えっ?」
「旦那様の奥様を見る目の優しいことったら……。いつも微笑ましく思ってるんですよ」
「そ、そうかしら……?」
「ええ、それはもう、奥様のことが可愛くて仕方ないっていう表情をされていますもの」
沙夜はそんなことにまったく気づいておらず、思わず頬が熱くなる。
「あら、奥様、照れちゃって! お顔が真っ赤ですよ!」
「もう、山下さんったら……からかわないでくださいよ」
「からかってなんかいませんよ。本当のことを申し上げているだけです。さあ、絹さやをこちらへくださいな。そろそろ準備を始めましょうか」
「お願いします」
ボウルをキッチンへ運んだあと、沙夜はベビーベッドで眠る彗の寝顔を見に行った。
先ほどまでミルクを飲んでいた彗は、今はすやすやと気持ちよさそうに眠っている。
生まれた頃よりずいぶん大きくなり、顔立ちもはっきりしてきた。見れば見るほど、司に似てきたように思える。
(まさか……最悪だと思っていた結婚生活が、こんなに幸せなものに変わるなんて……信じられない……)
すべては、彗が生まれてきてくれたおかげだと沙夜は思っていた。
そのころ、司は社長室でCFOを呼び出し、真剣な表情で話をしていた。
「向こうが提案してきたこの融資案件の書類から、担保設定、金利条項、期限、違約金……とにかくどんな細かいことでもいい。不備がないか再確認してくれ。少しでもおかしい点があれば知らせてほしい」
「分かりました。徹底的にチェックしますよ。それにしても……あの営業担当と何かあったんですか?」
「なぜそう思う?」
「いや、社長らしくないなあと思ったんですよ。長い付き合いのある財前中央銀行で、しかも奥様のお父上が頭取を務めている銀行なのに……こんな細かいところまで口を出すなんて、珍しいですよね。何があったんですか?」
「まあ、ちょっといろいろね……」
司の表情を見たCFO・今村俊雄は、何か察したように目を細めた。
「さては、この営業の“三国怜央”っていう男と何かありますね?」
「相変わらず鋭いな、お前は」
「やっぱり! どんなことなんです? 教えてくださいよ。協力しますから」
「うん、実は……」
司は、三国怜央と、怜央と共に悪だくみをしている沙夜の後輩・川原梨花に関する興信所の報告書を机に放り投げた。
「なんですか、これ……」
「いいから見てみろ」
今村は封筒から報告書を取り出し、添えられた写真を見て目を見開いた。
「この女は?」
怜央に腕を絡め、ラブホテルへ入っていく女の写真を見て、今村が驚いたように声を上げる。
「沙夜の後輩だ。長年、沙夜が可愛がっていた秘書室の子だよ」
「ということは……可愛がっていたはずの後輩が、この男とつるんで何か企んでいた……そういうことですか?」
「さすが勘がいいな」
「でも、だったら奥さんのお父上に直接言えばいいのでは?」
「いや。こんなくだらないことで、お義父さんのお手を煩わせるわけにはいかない。それに、この二人は一応うちが取引しているメガバンクの行員だ」
「じゃあ、社長ひとりで?」
「いや。幸い、沙夜の母親がこのことに気づいていて、一足先に動いていたらしい。今は互いに情報を共有している」
「なるほど……奥さんを傷つけたくないから、二人で動いてるってことなんですね?」
「そういうことだ」
今村は納得したようにうなずいた。
「分かりました。そういうことなら、意図的に書類をいじってる可能性もあるし……うちに不利な内容がないか徹底的に確認してみますよ」
「頼んだよ」
「任せてください!」
今村はニヤッと笑い、書類を手に部屋を出ていった。
社長室に残った司は窓辺へ行き、外を眺めながらつぶやく。
「沙夜を少しでも不幸にするやつがいたら、追放してやる……」
鋭い目つきでそう言った司は、ふとデスクの上に置かれた妻と息子の写真に目を留め、思わず頬を緩めた。
そして椅子に腰を下ろすと、静かに深呼吸をして、再び仕事に集中した。
コメント
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素敵な家族の話でほんわか優しい気持ちになっていたところで 出ましたね 梨花と玲央‼️でも司さんには二人の悪巧みなんて簡単にバレるでしょうね 早く撃退して 親子三人の平穏な暮らしがづっと続きます様に🙏
司さん、かっこいいです👍 この2人をぐうの音も出ないくらい落としてください。 よろしくお願いします🙇
司さん…本当に沙夜ちゃんを大切に想っていて、彗君にも優しくて素敵なお父さんですね🥰家政婦の山下さんからもお墨付きですもんね😉沙夜ちゃん もう遠慮無しで幸せ家族になって下さいね🥰❤️🍀 あの二人の不穏な動きを司さんは調べていたんですね😠CFOの今村さんも 味方に百人力ですね👍沙夜ちゃんの お義母さんもあの二人を行動を把握していたんですもんね あの二人をやっつけて下さい😤