テラーノベル
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まさか賢から、この後の予定を聞かれるとは思わなかった志絵は、ビクッと肩を震わせながら小さく後ずさる。
「どうした? なに挙動不審になってんの?」
「そっ……そんな事ないからっ!」
「で? この後の二次会どうすんの?」
志絵が腕時計をチラリと覗くと、二十一時を過ぎている。
このまま二次会も参加したら、自宅に帰れないかもしれない。
実家に帰ればいいのかもしれないけど、彼女の実家は福生で、駅から車で十五分ほど離れた場所にあり、最終バスも終わっている時間だ。
「ああ……私、家が遠いから、帰るわ」
「家が遠いって、お前の家って確か福生だろ?」
「大学に入学してから後楽園で一人暮らしをしてるんだ。大学の近所だし、今の職場も近いし」
志絵の言葉に、賢が瞠目した後、『マジか……』と呟いた。
「ちょっと。『マジか』って何よ……」
「いや……。俺も…………こっちに来てから後楽園に住んでる。東京ドームは徒歩で行けるし、神宮球場は車でも電車で行っても近いし」
「ええぇぇ!? ウソッ!?」
彼女の声が店内にやたら響き、クラスメイトから一斉に眼差しを向けられた志絵は、焦って口元を両手で覆い隠しながら瞳をキョロキョロと泳がすと、そんな様子を見た賢が彼女に指差ししながら爆笑している。
「ブハハハハハッ!! お前の声のデカさ、高校時代と全然変わってねぇな!」
賢が、からかうような言葉を残して立ち上がると、オーナーのインチョーに耳打ちしている。
志絵と一瞬だけ目が合ったインチョーが、すぐさま視線を別の方向に逸らして口元を緩ませると、エプロンのポケットからスマートフォンを取り出し、電話を掛け始めた。
(高西のヤツ、インチョーに何を吹き込んだの……?)
志絵は男同士の内緒話が気になって仕方がない。
けれど彼女は、いかにも『気にしてませんからっ』といった表情で残りのグレープフルーツサワーを飲み切った。
時刻が二十一時半を過ぎた頃、白髪混じりの短髪に濃紺のスーツを着ている五十代後半くらいの男性が入ってくると、店内を覗き込んだ。
「どうも。南伊タクシーです…………。って享。お客さん、どこだ?」
「オヤジ。忙しい時に悪いな。賢と坂口を後楽園までお願いできる?」
(へ? 高西と一緒に…………帰るって事!?)
志絵は目を見開いたまま唖然としていると、背後からポンと肩を触れられる。
「俺も……二次会出ないで帰るわ。俺ら、家が同じ方向だろ?」
何かを企んでいるかのように、賢が志絵に不敵な笑みを覗かせた。
コメント
1件
読みました!同じ後楽園に住んでるって判明した瞬間の志絵さんの「ええぇぇ!?ウソッ!?」、すごく共感しました(笑)。賢さんの不敵な笑みと「家が同じ方向だろ?」の台詞がニヤリとさせられて、二人の距離がこれからどう縮まっていくのか気になって仕方ないです。細かい仕草や視線の描写が丁寧で、画面越しにドキドキしました🌷
管野アリオ
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桃下結衣
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Jasmine
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