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夕方。

真白は自室、アレクシスはリビング。

それぞれ仕事中——のはずだった。


通話は繋いだまま。


「……」

「……」


五分経過。


「……真白」

「ん」

「生きてる?」

「生きてる。今、考えてる」

「音が一切しないから」

「考えてるとき、音出ない」

「ロボット?」

「違う」


キーボードを叩く音が、ようやく一瞬。

また静かになる。


「……」

「……」

「真白」

「今度は何」

「独り言、言わないタイプ?」

「言うときは言う」

「今は?」

「脳内会議中」

「参加者多い?」

「全員厳しい」


アレクシスはコーヒーを一口飲む。


「その会議、いつ終わる?」

「終わらせたい側は俺」

「決定権ないんだ」

「ない」


少し間。


「……あ」

「今の“あ”は?」

「一個通った」

「おめでとう」

「まだ油断できない」

「全会一致じゃないと?」

「むしろ一人でも反対すると詰む」

「過酷」


また沈黙。

アレクシスは書類をめくる音を、わざと少し大きく出した。


「……邪魔?」

「いや」

「安心?」

「ちょっと」

「ちょっとなんだ」

「集中切れないギリギリ」

「難しい注文」


しばらくして、真白が言う。


「アレク」

「なに」

「通話、切らなくていい?」

「いいよ」

「音なくても?」

「あるでしょ」

「何が」

「人の気配」

「……」


真白は少しだけ、椅子にもたれた。


「それでいい」

「うん」


また、静けさ。

でもさっきより、少しだけやわらかい。

ひとつ屋根の下、コーヒーの香り。

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