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夜。
真白は玄関で靴を脱ぎながら、袋を持ち上げた。
「買ってきた」
リビングにいたアレクシスが顔を上げる。
「重そう」
「重い。新作多すぎ」
「全部買った?」
「気になるやつだけ」
「それでこの量?」
「厳選した」
テーブルにコンビニ袋を置く。
がさ、と音がして、中身が見える。
プリン。
パン。
スナック。
あと、なぜかカップ麺。
アレクシスが一つずつ取り出す。
「夜にこれは多い」
「今食べるとは言ってない」
「言ってないだけで食べる」
「……ちょっとは」
「ちょっとで済む?」
「半分ずつなら」
「それならいい」
自然と分担が決まる。
真白はソファに座り、靴下のまま足を伸ばした。
今日の仕事は在宅だったが、打ち合わせが長くて頭が疲れている。
「何が一番気になってる?」
アレクシスがプリンの蓋を見ながら聞く。
「そのプリン」
「高いやつ」
「高いやつ」
「期待値上がる」
「外したら許さない」
「俺が作ったわけじゃない」
「でも選んだ」
「責任重大」
静かに笑い合う。
真白は袋からもう一つ取り出した。
新作の菓子パン。
「これ、パッケージいい」
「デザイン目線」
「仕事柄」
指でロゴをなぞる。
「フォントがちょっと惜しい」
「厳しい」
「惜しいだけ。悪くない」
「味は?」
「これから」
袋を開ける音。
半分に割って、一つ渡す。
「どうぞ」
「どうも」
一口。
咀嚼。
少しの沈黙。
「……」
「……」
「普通」
「普通だね」
「パッケージ勝ち」
「ある」
テーブルに置く。
すぐにプリンへ移行。
スプーンを二つ出す。
蓋を開ける。
カラメルの匂い。
「これは?」
「美味しそう」
「美味しそう」
一口目は真白。
少しだけ目が開く。
「どう?」
「……」
「外した?」
「いや」
もう一口。
「当たり」
「よかった」
「ちゃんと美味しい」
アレクシスも食べる。
「うん」
「うん」
頷きが揃う。
夜のコンビニ新作会議は、だいたいこんな感じだ。
評価は厳しめ。
でも、外れても怒らない。
テーブルの上に並んだ小さな新作たち。
全部食べるわけじゃない。
半分ずつで十分。
真白はソファにもたれた。
「明日、早い?」
「普通」
「じゃあ今日はこのへんでやめる?」
「やめる」
「偉い」
「偉い」
でも、手はまだプリンに伸びる。
「それ最後」
「最後」
「本当に?」
「本当に」
もう一口。
静かな夜。
テレビはついていない。
でも、退屈じゃない。
新作がなくても、たぶん同じ夜になる。