テラーノベル
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俺は、まだ薄暗い朝の街を重い袋を抱えて歩いていた。手は痛く、腕が震えているのを感じる。それでも晃司に言われた通りに買い出しを済ませなければならない。頭の中では、「どうせまた叱られる、怒られる」と思いが巡る。
角を曲がると、見覚えのある顔が揃っていた。晃司や颯馬の友人たちだ。全員で俺の前に立ちふさがる。
「お、買い物かよ、俺らも手伝おうか?」
と一人が笑う。笑顔は嘲笑にしか見えない。
「……あ、あの、通してください」
俺は小さく言う。声が震えていることに自分でも気づく。
「お、なんだよその弱々しい声。もう少し威勢よく言えよ」
別の友人が肩に手を置く。体は押され、袋の重みでバランスを崩す。
「持ってやるよ、重いんだろ?」
颯馬の友人が袋を無理やり引っ張る。俺は抵抗できず、足を滑らせて転びそうになる。
そこからは、いつものパターンだった。手首を軽く絞られ、肩を押さえられ、持っていた袋を地面に置かされる。
「お前、こんなんで大丈夫か? もっと苦しませてやろうか」
晃司の友人が笑う。俺はうめき声を漏らすだけだ。
さらに、袋の中身を使った屈辱的な行為が加わる。缶や食材を床に投げつけられ、それを手で拾ってまた元に戻す。
「お前、まるで奴隷みたいだな」
颯馬の友人が言う。目の前で笑いながら、何度も手を払いのけられる。
「俺……悪いことしてないのに……」
声に出てしまう。自分でも情けないと思うが、口から零れるのを止められない。
「は? 俺らの前で文句言う気か?」
晃司の友人が怒鳴る。肩を押し、顔を近づける。体が縮み、自然と謝罪する言葉を探すが、出てこない。ただ、必死に体を守るだけだ。
俺のバッグを振り回され、背中や腕に衝撃が走る。歩くことすら許されず、何度もしゃがみ、立たされる。友人たちは楽しそうに命令を重ね、心理的圧迫をかけてくる。
「お前、ほんとに使えねえな」
「もっと動けよ、まるで物だな」
と声が飛ぶ。
歩くたびに、袋の重さと加害者たちの手が同時に俺を押し潰す。息が上がり、足はガクガクするが、止まるわけにはいかない。少しでも遅れると、さらに手や肘で体を叩かれ、罵声が飛ぶ。
「これで終わりじゃないんだろ?」
晃司の友人が呟く。言葉は軽いが、背筋に冷たい恐怖が走る。俺はただ、「はい……」と答え、無理やり体を前に進めるしかない。
通り過ぎるだけのつもりが、集団による身体的攻撃と心理的屈辱の連鎖に巻き込まれ、俺は地面の冷たさ、重い袋、圧迫感、笑い声、罵声、全てに押し潰されそうだった。目を閉じて耐えるしかなく、心の中で「俺は悪い、俺が悪い」と繰り返す。
道の途中、誰かが投げた空き缶に当たりそうになり、手を出すとまた叩かれる。手足、背中、顔、全身が無差別に屈辱と痛みに晒される。それでも、歩くことをやめればもっと酷くなる。
買い出しが終わるころには、全身の痛みと心の疲労が重なり、歩くのもやっとだった。加害者たちは笑いながら去っていき、俺は地面に膝をつき、重い袋を抱えたまま肩を震わせる。
「……どうして……」
問いかける力もなく、ただ体を引きずるしかなかった。
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