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昼休み、教室の照明がほんの少し落ちた。だが、誰もそれを珍しいとは思わなかった。いつものように、生徒たちはスマホに目を落としている。
その時、教室の大きなスクリーンに、突然真っ黒な背景が映し出された。
そこには白い文字が浮かび上がる。
――「あのふたりは、セットの加害者だ」――
ざわめきが起きる。
生徒たちの視線はスクリーンに釘付けになったまま、誰もすぐには声を上げなかった。
文字は続く。
「日下部は遥のことを庇っているふりをしているが、それは、何か隠しているからだ。真実を知りたければ、調べてみろ」
「この学校には隠しきれない“秘密”がある」
「遥は弱者ではない。彼らは共犯だ」
スクリーンが突然消え、教室が薄暗いまま静寂に包まれた。
その沈黙は、まるで誰も声を出せないように、教室の空気を凍らせた。
数秒の後、教室は急激にざわつき始めた。
「マジで?あいつら、そうなんだ」
「嘘だろ……」
「でも、こんなふうに言われたら、もう信じるしかない」
「なんか、あのふたり怪しいよな」
噂は瞬く間に教室を駆け巡った。
誰も真偽を確かめようとはしない。むしろ、確かめることを恐れている。
日下部は、スマホを見つめながら無言で拳を握りしめた。
遥は目を伏せ、肩を震わせた。
翌日、SNSでは匿名アカウントからの投稿が爆発的に拡散された。
――「日下部が遥を庇うのは、何か裏がある。あいつら、共犯関係なんだ」
――「遥を利用してるだけだろ、実際は」
――「そんな関係、気持ち悪いし怖い」
コメント欄は、匿名の攻撃と嘲笑の嵐。
二人の名前は瞬く間にクラス中、学校中へと拡散され、やがて周囲の無関心や加害へとつながっていく。
教室の隅では、誰かが小さく嘲笑しながら指をさす。
日下部はその視線を避けるように、こらえきれない感情を胸に閉じ込めた。
遥は何度も呼吸を整え、声にならない叫びを飲み込む。
「これ以上、離れたら……おまえは……」
日下部は強く心に誓う。
たとえ世界が敵でも、遥を守り続けると。
しかし、その決意は、孤独の深さを増すだけだった。