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#読み切り
ドアが開く。
相談者は小さく言った。
「自分から誘ったのに、当日ちょっと行きたくなくなる……」
蓮司は椅子を引く。
「毎回?」
「毎回じゃないけど、結構ある」
「ドタキャンする?」
「しない。行く。
でも直前でテンション落ちる」
蓮司は座る。
「誘ったときはどうだった」
「普通に行きたかった。
その場のノリで決めた感じ」
少し沈黙。
「それ、“未来の自分”に合わせてない」
「え」
「今の気分で予定決めてる。
当日の状態は別」
相談者は黙る。
「だからズレる」
「……確かに」
間。
「じゃあどうすればいい」
「誘うときに条件つける」
「条件?」
「“短めで”とか、“軽くで”とか」
相談者は考える。
「最初から下げる?」
「そう。逃げ道作る」
少し沈黙。
「でもそれってノリ悪くない?」
「当日ダウンする方がノリ悪い」
相談者は苦笑する。
「それはそう」
間。
「あともう一個」
「何」
「当日のテンションで評価し直すな」
「え」
「“今行きたくない”を、
“誘わなきゃよかった”に繋げてる」
相談者は一瞬止まる。
「……やってる」
少し沈黙。
「それ別の話だろ」
「別?」
「当日のコンディションの問題。
予定の良し悪しじゃない」
間。
「でも気持ちは下がってる」
「下がるのは普通」
相談者は黙る。
「スタートだけやれ」
「スタート?」
「行って、10分だけいる」
相談者は眉を寄せる。
「10分?」
「そこまでやって判断する。
最初の抵抗が一番でかい」
間。
「それで無理だったら?」
「帰ればいい。
最初から“途中で抜けてもいい前提”にしとけ」
相談者は少し考える。
「それなら行けるかも」
少し沈黙。
「なんかさ」
「何」
「誘った時の自分と、当日の自分が別人だった」
「別でいい」
「合わせようとしてた」
「無理だな」
相談者は小さく笑う。
ドアの前で立ち止まる。
「短くして、最初だけ行く」
「それでいい」
ドアが閉まる。
予定は、その日の自分に最適化されてない。
だから、余白を残しておく。
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