テラーノベル
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ドアが開く。
相談者は少し不機嫌そうに言った。
「俺の机、会話の通り道になってる……」
蓮司は椅子を引く。
「どういう状態」
「前後とか横が話してて、俺のとこ経由でやり取りしてる。でも俺はその会話に入ってない」
「物理的に挟まれてるな」
「そう。笑いは起きてるのに、自分は外」
蓮司は座る。
「そのとき何してる」
「とりあえず聞いてる。たまに笑うけど、拾われない」
少し沈黙。
「それ、“参加してるようで参加してない位置”だな」
「一番きついやつ……」
「完全に外なら楽なんだけどな」
「分かる……」
間。
「じゃあどうする」
「どっちかに寄せる」
「どっちか?」
「“入る”か、“抜ける”か」
相談者は眉を寄せる。
「中途半端がダメ?」
「一番消耗する」
少し沈黙。
「入る場合は?」
「一回だけ、片側に向けて話す」
「片側?」
「前か後ろか、どっちかにだけ通す」
相談者は考える。
「全体じゃなくて?」
「全体に出すと薄まる。一人に通せば流れに乗る」
間。
「抜ける場合は?」
「物理的に切る」
「え」
「体の向き変える。机に向く、別のことする」
相談者は少し驚く。
「それでいいの?」
「いい。“ここは入ってない”って位置を自分で作る」
少し沈黙。
「今までは?」
「両方やろうとしてた」
相談者は苦笑する。
「確かに……」
「聞きながら、入りながら、でも入れてない」
間。
「なんかさ」
「何」
「存在してるのに、扱われてない感じだった」
「位置が曖昧だからな」
少し沈黙。
「どっちか選べばいいか」
「そう」
ドアの前で立ち止まる。
「真ん中やめる」
「それでいい」
ドアが閉まる。
通り道にいる限り、目的地にはならない。
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