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ゆぴ
54
スミレ
131

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昼休みの終わりが近づくにつれ、教室の空気は少しずつ落ち着きを取り戻していた。 笑い声は絶えない。
その輪の中に遥はいない。
机へ戻ったばかりの遥は、重い息をつきながら鞄へ手をかけた。
額から流れた汗が頬を伝う。
熱は朝よりも確実に上がっていた。
「おい」
机へ細い段ボール箱が置かれる。
「これ、倉庫」
遥は箱を見る。
「何ぼーっとしてんの」
「早く行けよ」
「授業始まる前に終わらせろ」
何人かが笑う。
頼み事ではない。
命令でもない。
ただ、「遥がやるもの」として話が進んでいく。
断る余地は最初から用意されていなかった。
遥は無言で箱を抱えた。
腕へ重みがかかる。
身体が小さく揺れる。
「危な」
「落とすなよ」
「弁償だからな」
また笑い声。
遥は何も返さず教室を出た。
廊下は静かだった。
教室の喧騒だけが遠ざかっていく。
一歩進むたび、足が床へ吸いつくように重い。
倉庫は校舎の端にある。
人通りも少ない。
ようやく扉の前へ着き、鍵の掛かっていないことを確かめて中へ入る。
箱を指定された棚の前へ置く。
しゃがみ込んだだけで目の前が白く霞んだ。
数秒、その場から動けない。
息を整えようとしていると、背後で扉の閉まる音が響いた。
ガタン、と金属の音。
遥は振り返る。
取っ手へ手を伸ばす。
開かない。
もう一度、力を入れる。
動かない。
外から誰かの笑い声が聞こえた。
「そのうち誰か開けるだろ」
「授業始まるぞ」
足音が遠ざかる。
遥は扉へ額を預けた。
熱い。
身体の内側が焼けるようだった。
何度か呼吸を整えようとするが、思うように息が入らない。
立っていることさえ苦しくなり、ゆっくりと壁にもたれる。
冷たいコンクリートの感触だけが、火照った身体にはわずかに心地よかった。
教室では、授業開始のチャイムが鳴る。
誰も遥の席を気に留めない。
「あいつ、まだ戻ってないな」
そんな一言はあっても、それ以上続く者はいなかった。
ただ一人を除いて。
日下部は空いた席を見つめたまま、朝から抱えていた違和感が胸の奥で大きくなるのを感じていた。
「遅すぎる」
その一言だけを小さく呟き、静かに席を立った。
コメント
1件
えっと……もう胸がぎゅってなった……😭✨ 遥の汗とか重い足取り、閉じ込められて扉に額を預けるシーンの描写が生々しくて、読んでてこっちまで息苦しくなったよ……。 「誰も遥の席を気に留めない」って一文がめっちゃ刺さった……孤独すぎる。 でも日下部が動き出したところで救いを感じた!次どうなるか気になって仕方ない……!! ruruhaさん、また胸が痛くなるような素敵なシーンをありがとうございます……🌸