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「……ちょっといいですか」
放課後の相談室。部屋に入ってきたのは、隣のクラスの女子だった。
「何?」
「……部活、やめたいんです」
「お、おう」
遥は思わず声が裏返った。
「いや、別にいじめられてるとかじゃないんですよ。ただ……先輩たちのテンションが高すぎて、ついていけないっていうか」
「なるほど」
遥は口元に手を当てて考え込む。
「じゃあ、やめれば?」
「そんな軽く言われても……」
「だって、やめたいんだろ?」
「でも、途中でやめたら裏切り者って思われそうで」
遥は少し笑った。
「そう思う人はいるかもしれないけど……それ、お前の人生のメインイベントじゃないだろ」
「まあ……」
「だったら、そこに全体力使わなくていい。合わない靴は脱げばいいんだよ」
女子は「靴……」とつぶやき、少し笑った。
「じゃあ、やめてもいいですかね」
「許可いらないけど……まあ、俺がOK出しとくよ」
軽く手を振って去っていく背中を見ながら、遥は小さく息をついた。
――俺は靴どころか、鎖でも繋がれてるみたいだけどな。