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――遥の告白が、教室に落とされた。
「……お金、ありませんでした……」
その瞬間、空気が一段階、冷たく沈んだ。
笑い声は続いているのに、どこか底なしの静けさが同時に存在していた。
まるで、この一言を境に“扱い”のランクが変わったと言われているようだった。
「へぇぇ……ガチで貧乏なんだ?」
男子のひとりが、あざけるように顔を近づけてくる。
「なあ、美桜。“金ねぇ奴”に買い物頼むのってさ……もう違うよな?」
「うん。買い物じゃなくて、“試し”だよね」
“試し”という言葉が、遥の背中にじわりと冷たく広がる。
美桜はわざとクラス中に聞こえる声で宣言した。
「みんなさ、遥が“金無いくせに黙ってた”ってどう思う?」
「最低~」
「図々しすぎ」
「なんか……人として終わってない?」
言葉が弾丸みたいに飛んできて、遥の表情は固まる。
それでも、黙って前髪の影に顔を隠すしかできない。
美桜は一歩近づき、制服の胸元を軽くつまんで持ち上げた。
「バイトもできない、家でも金出してもらえない、友達もいない──で、“使われる側”のくせに、金欠?」
わざと“使われる側”を強調して言った。
クラスがどっと沸いたように笑う。
「てかさ、金ないなら“払わせる方法”考えなよ?」
男子のスマホが一斉に向けられる。
「払わせるって……どういう意味?」
遥が反射的に聞いてしまった。
問い返した瞬間、後悔が喉元まで熱く上る。
「は? なに聞いちゃってんの?」
男子が机を蹴って近寄ってくる。
「自覚ないの、マジで? お前の“価値”なんか、もう金じゃ買えねぇんだよ」
美桜が笑う。
「“払う方法”ってさ──金じゃないやつもあるよね? ねぇ、男子?」
男子たちの視線が“値踏み”に変わる。
性的な直接表現は出ない。
だけど──匂わせだけで十分に背筋が凍る。
「ま、昼はまだ軽くしとくけど」
「放課後、ちゃんと“働いて”もらうからな?」
働く──その言葉が、最悪の想像を呼び起こす言い方で発せられる。
美桜が遥の頬に触れ、軽く叩いた。
指先で、所有物の状態を確かめるように。
「金欠って、ほんっと便利だよね。
だって──“抵抗できない理由”がひとつ増えるんだもん」
男子の笑い。
女子の含み笑い。
スマホの録画音。
そして、宣告。
「みんなー、今日から遥は“買い物係”じゃなくて──“何でも係”ね」
「……」
「拒否したら、今日の動画と一緒に“金欠告白シーン”も拡散しちゃうから。
あ、男子、切り抜きよろしく」
男子がニヤニヤしながら答える。
「了解でーす。“金欠で震える奴隷”ってタイトルで上げとくわ」
クラス中が爆笑した。
その中心で、遥だけが静かだった。
震えもしなかった。
ただ、目の奥で小さく何かが崩れていく音だけが、確かにあった。