テラーノベル
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ドアが開く。
相談者は少しだけ笑って言った。
「誰とも会ってない日のほうが楽なんだけど、なんか負けた気がする……」
蓮司は椅子を引く。
「何に負けた」
「分かんない。
でも“ちゃんとした一日じゃない”感じがする」
「基準どこに置いてる」
「人と会う、外出る、何かする、みたいなやつ」
蓮司は座る。
「それ、他人基準だな」
相談者は肩をすくめる。
「多分そう」
少し沈黙。
「で、実際どうだった」
「普通に過ごした。
疲れてたから休んだだけ」
「じゃあ機能はしてる」
「機能?」
「必要な回復はできてる」
間。
「でも“何もしてない”感じが消えない」
「“見える成果”がないからな」
相談者は黙る。
「休みは、見えない側の作業」
「作業……?」
「外に出ないと、何も起きてないように見えるだけ」
少し沈黙。
「でも周りは動いてるじゃん」
「見える範囲な」
相談者は小さく息を吐く。
「比べてるか……」
「比べるなら、同じ条件にしろ」
「同じ条件?」
「“疲れてる状態の自分”と比べろ。
元気な他人と比べるな」
間。
「それはずるくない?」
「条件合わせてるだけだ」
相談者は少し笑う。
少し沈黙。
「なんかさ」
「何」
「休んでるのに、どっかでサボってる感じがある」
「“やってない不安”だな」
「そう」
「それ、完全には消えない」
相談者は顔を上げる。
「消えないの?」
「消すものじゃない。
目安にするもの」
間。
「目安?」
「“そろそろ動くか”のサイン」
相談者は黙る。
「でも今日は?」
「まだ休みでいい」
少し沈黙。
「なんかさ」
「何」
「ずっと全力じゃないとダメみたいに思ってた」
「無理だな」
相談者は苦笑する。
ドアの前で立ち止まる。
「負けじゃないか」
「ただの調整だ」
ドアが閉まる。
何もしてない日は、
何もしてないんじゃない。
見えないところを整えてるだけだ。
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