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昼過ぎ。
近所のスーパー。
真白は、棚の前で動かなくなっていた。
「……」
「真白」
「……」
「思考止まってる?」
「止まってない」
止まっている人の顔だった。
真白の視線の先には、並ぶヨーグルト。
プレーン、低脂肪、ギリシャ、砂糖不使用。
「どれにするの」
「用途次第」
「用途?」
「仕事用か、休憩用か」
アレクシスは一拍置いた。
「ヨーグルトに用途ある?」
「ある」
「真顔で言わないで」
真白は腕を組む。
「甘いと集中が切れる」
「でも酸っぱすぎると顔が険しくなる」
「……それは自覚ある」
アレクシスは一つ手に取る。
「じゃあ、これ」
「それ、砂糖入ってる」
「少なめ」
「……」
「今、“妥協案としては許容”って顔した」
「してない」
結局、二種類入れる。
「無駄じゃない?」
「用途が違う」
「ヨーグルトなのに?」
次は即席スープの棚。
真白が言う。
「それは夜用」
「これは?」
「昼」
「こっちは?」
「非常時」
「何が起きる想定?」
「締切」
アレクシスは笑った。
「真白、仕事の基準が全部“締切”基準」
「現実的」
「人生も?」
「……そこまでは」
レジへ向かう途中、アレクシスがふと足を止める。
「これ」
カゴに入れたのは、小さな焼き菓子。
「仕事用?」
「休憩用」
「甘い」
「たまには」
真白は一瞬だけ考えてから言う。
「……一個だけなら」
「二個入ってる」
「……今日は頑張った」
「まだ何もしてないよ」
「これから」
会計を終えて、袋を持つ。
外は少し風が冷たい。
「無駄な買い物だった?」
アレクシスが聞く。
「……」
真白は袋の中身を思い返す。
「無駄じゃない」
「即答」
「安心した」
「何が」
「今日、生きられる」
アレクシスは肩をすくめた。
「大げさ」
「でも、事実」
並んで歩きながら、袋が軽く揺れる。
たぶん今日も、平和だ。