朝、同じ時間に二つの目覚ましが鳴った。
ほぼ同時に止められたのが、少しだけおかしい。
「……鳴ったね」
「鳴ったな」
布団の中で、二人とも動かない。
「先、起きる?」
「今日は真白で」
「昨日もそれ言われた気がする」
「気のせい」
結局、アレクシスが先に起きる。
真白は少し遅れて起き上がり、伸びをした。
キッチンでは、二人分の準備が自然に分かれる。
アレクシスがコーヒー、真白がトースト。
「仕事始めだね」
真白が言う。
「始まるな」
「終わってたみたいな言い方」
「正月は、終わってた」
真白は笑い、皿を並べる。
「今日は在宅?」
「うん。真白も?」
「うん。同じ」
同じ言葉が重なると、それだけで安心する。
朝食後、それぞれの作業スペースへ。
アレクシスは机、真白はダイニングテーブル。
キーボードの音が、二方向から聞こえる。
打鍵のリズムは違うのに、不思議と邪魔にならない。
しばらくして、真白が声を上げた。
「……メール多い」
「仕事始めあるあるだ」
「未読が現実を殴ってくる」
「言い方」
アレクシスは口元だけで笑う。
昼前、二人とも一度手を止める。
「休憩しない?」
「しよう」
コーヒーを入れ直し、少しだけ立ち話。
「旅行、遠かった気がする」
「でも、昨日のことみたいだ」
「切り替え、早いね」
「生活に戻るのは得意」
「それ、ちょっと羨ましい」
午後は、それぞれ集中する時間。
真白は眉間に少しだけ皺を寄せ、画面を睨む。
アレクシスはそれを見て、何も言わない。
必要なのは声より、放っておくことだと知っている。
夕方、ほぼ同時に椅子が動いた。
「終わった……」
「お疲れ」
「アレクシスも?」
「ああ」
キッチンに並び、自然に同じ方向を見る。
「ちゃんと戻ってきたね」
真白が言う。
「戻ってきたな」
「でも、悪くない」
「悪くないな」
仕事始めは、特別な日じゃない。
ただ、二人で同じリズムに戻る日。
その事実だけで、十分だった。






