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遥はしばらく泣き続けた。胸の奥に溜まったものを吐き出すように。
それでも涙が枯れるころには、ただ疲れ果てて、日下部の肩にもたれかかっていた。
「……なぁ」
声がかすれる。
自分でも、なにを言いたいのかはっきりわからない。
けれど、言葉が零れ落ちる。
「……離れんなよ」
一瞬、沈黙。
遥の心臓が大きく跳ねた。
それは、ずっと口にできなかった願いだった。
言えば、壊れると思っていた。
言えば、拒まれると思っていた。
日下部の返事はすぐには返ってこなかった。
でも、腕の力が少しだけ強くなった。
「離れない」
その一言が、遥の胸の奥で何かを貫いた。
怖かった。
信じたいのに信じられない。
でも、ほんの一瞬でも――「繋がりたい」と思ってしまった自分がいる。
その事実が、遥をさらに混乱させる。
「……バカだよな、おれ……」
呟きながら、遥は日下部の服を握った。
握る手は震えていた。
だけど、自分から触れようとしたのは、初めてだった。