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いじめのはずがプロポーズでした

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いじめのはずがプロポーズでした

45 - 第45話 リンゴ飴事件(修正・加筆)

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2025年09月10日

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夕暮れの神社、夏祭りの人混みの中を歩きながら、大地は相変わらずのテンションだった。


「お、見ろよ隼人! リンゴ飴! これぞ祭りといえばってやつだろ!」


すでに焼きそばとたこ焼きを食べ終えているのに、大地はまだまだ食欲も元気も衰え知らずだ。


「食いすぎじゃね? 腹壊すぞ」


「はっはっは、大地の胃袋は無限大!」


どうでもいいポーズを決めてから、迷わずリンゴ飴を購入する。


だが、運命は無情だった。


「わっ!」


走ってきた小さな子とぶつかり、大地のリンゴ飴はくるくる回転しながら宙を舞い、そのまま石畳に落ちた。


「あーーーーーー!! 俺の初リンゴ飴がぁぁぁぁ!」


大地は両膝をつき、絶望の演技。周囲の知らない人たちすら笑い出す。


「大げさすぎ」


隼人は呆れながらも、自分のリンゴ飴を差し出した。


「……ほら、俺のやる」


「え、いいのか? おまえの祭りの主役だろ?」


「別に。どうせ一口で飽きるくせに」


「おお! さすが隼人、心の広さが祭りサイズ!」


受け取ろうとした瞬間、大地の指が隼人の手としっかり重なった。ほんの一瞬、けれど隼人の心臓は不意に大きく跳ねる。


「……なに固まってんだよ」


「い、いや、なんでもねーし!」


大地は気にせず豪快にかぶりついた。


「うんめぇ! やっぱ祭りはこれだな!」


「……バカ」


ぼそっと隼人は呟く。


そのとき、花火がドンと夜空に咲いた。大地は「おおお!」と声を上げ、見とれる。リンゴ飴を片手に笑う横顔は、まるで子どもみたいに無邪気で、隼人は目を逸らすことができなかった。


しかしその直後。


「うわっ、人多っ!」


人の波に押され、大地の姿が視界から消えた。


「おい、大地!」


焦って探すと、屋台の端で手を振る姿を見つけた。頬にソースをつけたまま、けろっと笑っている。


「迷子になるかと思ったぜ!」


「おまえが勝手に消えたんだろ!」


怒鳴りながらも、無事を確認して心の底では安堵していた。


「なあ隼人!」


「なんだよ」


「今日一番楽しかったのは――このリンゴ飴事件だな!」


バカ笑いする大地に、隼人は思わずため息をついた。


「……ほんと、どうしようもねえやつ」


でも、そのどうしようもなさに振り回される自分を止められない。

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