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ruruha
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きゆう
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📩 相談
高校2年・Sさん
私は、自分で決めたことなのに、誰かに否定されるとすぐに自信がなくなります。
進路のことでも、部活のことでも、友達との付き合い方でもそうです。
たとえば、私は今の部活を辞めようと思っています。人間関係が悪いわけではないし、嫌がらせをされているわけでもありません。ただ、前ほど楽しくなくなったし、ほかにやってみたいことができました。
自分なりに考えて、親にも話して、辞める方向で気持ちを固めていました。
でも、友達に話したら「ここまで続けたのにもったいなくない?」「あと少し頑張れば、もっと楽しくなるかもしれないじゃん」と言われました。
その子は私のことを心配してくれたんだと思います。責められたわけでもありません。
なのに、その言葉を聞いた途端、自分の決断が急に軽いものに思えてきました。
本当はまだ頑張れたのに、面倒になって逃げようとしているだけなのかもしれない。ほかにやりたいことがあるというのも、今の部活から逃げるための言い訳なのかもしれない。
そう考え始めたら、何が本音なのか分からなくなりました。
別の友達に相談したら「自分で決めたならいいんじゃない?」と言われたんですが、今度はその言葉に安心して、やっぱり辞めようと思いました。
自分の考えが、周りの言葉で簡単に変わってしまうんです。
自分で決めたいのに、誰かに「それでいい」と言ってもらわないと決めきれません。
人の意見を聞くことと、人の意見に振り回されることの違いが分からなくなっています。
どうしたら、自分で決めたことを自分で信じられるようになりますか。
蓮司「Sって、最初は辞めるって決めてたんだよな。で、友達に言われたら迷い始めて、別の友達に肯定されたら安心した」
遥「うん……。自分の中では決まってたのに、人に言った途端、分からなくなったんだよな」
日下部「最初に決めた理由は、今も変わってないのか?」
遥「ほかにやりたいことができたって書いてある」
日下部「なら、そこは一度考えてみてもいいと思う。辞めたい理由がなくなったのか、それとも、誰かに反対されたことで不安になったのか」
蓮司「ただ、Sはたぶん、理由を確認するだけじゃ安心できないんだよ」
遥「どうして?」
蓮司「自分で理由を並べても、その理由が正しいかどうかを、誰かに保証してほしくなるから。『もったいない』って言われたら、辞める理由が弱く見える。『自分で決めたならいい』って言われたら、今度はそれが正解に見える」
日下部「自分の判断を、周りに採点してもらってる状態か」
蓮司「そう。しかも、相手は別に採点してるつもりなんかないんだよな。ちょっと意見を言っただけでも、Sの中では合否が決まる」
遥「……でも、誰かに意見を言われたら、考え直すこともあるだろ?」
日下部「ある。自分では気づいていなかったことを教えてもらえる場合もあるからな」
蓮司「問題は、考え直した結果じゃなくて、考え直すきっかけだろ。Sは友達の話を聞いて、何か新しい事実が分かったのか?」
遥「……いや、友達がもったいないって言っただけだな」
蓮司「そう。『もったいない』は、その友達がどう感じたかって話だ。Sが部活を続けたほうがいい理由を、新しく発見したわけじゃない」
日下部「その友達にとっては、続ける価値があるように見えたのかもしれない。でも、Sがこれから何をしたいかまでは、その友達には決められない」
遥「友達は、Sが後悔しないように言ったのかもしれないな」
蓮司「そうかもしれない。だから、友達の言葉を無視しろって話じゃないんだよ。『もったいない』と言われて、自分が何をもったいないと感じているのか考えるのはいい。でも、相手がもったいないと思ったから、自分もそう思わなきゃいけないわけじゃない」
遥「……俺だったら、そこで迷うと思う。自分では決めたつもりでも、誰かに違うことを言われると、そっちのほうが正しい気がしてくる」
蓮司「相手が自分より自信ありそうに見えたら、余計にな」
遥「そうなんだよな。自分はこんなに迷ってるのに、相手は簡単に言い切るから」
日下部「迷っていることと、考えていないことは違う。迷いがあるからといって、最初の判断が適当だったとは限らない」
蓮司「あと、誰かに反対されたときって、最初に決めた自分まで疑い始めるんだよな。『あのときはちゃんと考えてなかったのかも』って。でも、今の自分が迷ってるからって、過去の自分が何も考えてなかったことにはならない」
遥「……そうだな」
日下部「Sは、部活を辞めたいと思ったとき、何を考えたんだろうな。楽しくなくなったことも、ほかにやりたいことができたことも、友達に話す前からあったんだろ」
遥「うん」
日下部「だったら、友達の言葉を聞いた今、改めて考えればいい。続けることで得られるものはあるか。辞めたら何ができるか。辞めたあとに後悔する可能性はあるか。続けたまま、ほかにやりたいこともできるのか」
蓮司「そのへんを考えて、やっぱり辞めると思ったなら辞めればいいし、続けたい理由が見つかったなら続けてもいい。どっちを選ぶかより、何を理由に選ぶかだろ」
遥「でも、考えた結果が友達と同じになったら?」
蓮司「それの何が問題なんだ?」
遥「いや……。人に言われたからそう思っただけなのか、自分でもそう思ったのか、分からなくなりそうで」
蓮司「じゃあ、友達の言葉を聞く前に、自分がどう考えてたか思い出してみればいい。友達の意見を聞いたあとに納得できる理由が見つかったなら、それも自分の考えになったってことだろ」
日下部「人から聞いた意見だから、自分の判断に使ってはいけないわけじゃない。参考にして、自分で考えたならいい」
遥「……自分の考えって、全部自分一人で思いついたものじゃなくてもいいのか」
蓮司「そりゃそうだろ。進路だって、誰かの話を聞いて選択肢が増えることはある。人に影響されないことを目指したら、誰の話も聞けなくなるぞ」
遥「そうだよな……」
蓮司「ただ、Sが気になるのは、周りの意見を参考にすることそのものじゃないんだと思う。自分で決めたことなのに、誰かが反対すると、自分の判断を信じられなくなることだろ」
遥「……うん」
日下部「だったら、反対されたときに、すぐ結論を変えないようにしてみたらどうだ。意見を聞いたその場で、続けるか辞めるかを決め直さなくてもいい」
蓮司「そうそう。『そういう考えもあるんだな』で、一回持ち帰ればいい。納得できる部分があれば考える。納得できないなら、そのままにしておく。相手に返事をするために、自分の結論まで出す必要はない」
遥「……でも、相手が『で、結局どうするの?』って聞いてきたら?」
日下部「『まだ考えてる』って答えればいい。決めたことでも、考え直している最中ならそう言えばいいし、すぐに説明できなくても問題ない」
蓮司「人に聞かれた瞬間に、答えを完成させようとするから苦しくなるんだろうな。自分の中で考えてることを、誰にでも分かる形で説明できるとは限らないし」
遥「……自分で決めたことなら、ちゃんと説明できなきゃいけないと思ってた」
蓮司「説明できることと、正しい選択であることは同じじゃないだろ。説明がうまい奴が、いつも正しい選択をしてるわけでもない」
日下部「自分の考えを言葉にするのは大事だけど、説明が途中だからといって、考えがないことにはならない」
遥「……俺、誰かに聞かれたとき、うまく説明できないと、自分でも本当は分かってなかったんだって思うことがある」
蓮司「それはあるだろうな。自分の中では分かってたつもりでも、言葉にしようとすると足りない部分が見つかることはある」
遥「やっぱり、分かってなかったってこと?」
蓮司「いや。そこで初めて分かることもあるって話。だから、説明できなかったことを理由に、最初の判断を全部捨てる必要はない。足りないところを考えればいいだけだろ」
日下部「自分で決めるって、一度決めたら二度と迷わないことじゃないと思う。考えて、迷って、必要なら選び直す。その過程も含めて、自分で決めているんじゃないか」
遥「……そう考えたら、少し気が楽かもしれない」
蓮司「Sは『自分で決めたい』って言ってるけど、もしかしたら『自分の判断を間違いだと思わずにいたい』って気持ちも強いんじゃないか」
遥「間違えたくないってこと?」
蓮司「それもあるだろうけど、誰かに否定された瞬間、今まで自分が考えてきたことまで全部駄目になったように感じるんじゃないか。だから、誰かに『それでいい』って言ってもらいたくなる」
日下部「間違っていたら、直せばいいんだけどな」
遥「……それが簡単にできたら、悩まないんだろうな」
蓮司「選択って、あとから結果が分かることも多いからな。辞めてよかったかどうかなんて、辞める前に全部は分からない。続けたら続けたで、辞めていたらどうなってたんだろうって考えるかもしれない」
日下部「どちらを選んでも、選ばなかったほうの可能性は残る。だから、後悔する可能性があることだけを理由に、決められなくなるのもつらいと思う」
遥「……じゃあ、後悔してもいいってこと?」
蓮司「後悔したくないだろうけど、後悔する可能性をゼロにはできないってこと。大事なのは、絶対に後悔しない選択を探すことより、今の自分が何を大切にして選ぶかじゃないか」
日下部「選んだあとに気持ちが変わったら、そのとき考えればいい。今の自分が知らないことまで、先回りして全部決めるのは無理だからな」
遥「……Sは、友達に何て言えばいいんだろう」
蓮司「別に、納得させる必要はないだろ。『心配してくれてありがとう。でも、もう少し自分で考えてみる』でもいい。友達の意見を聞いたことと、その意見どおりにすることは別だから」
日下部「それで相手が納得しなくても、Sが考える時間まで渡す必要はない」
遥「……自分の決断を信じるって、絶対に正しいと思い込むことじゃないんだな」
蓮司「最初から正しいって決めつけるのも違うだろ。自分で考えて、必要なら見直す。それでも最後に選ぶのは自分。そういうことじゃないか」
日下部「少なくとも、誰かが違う意見を言っただけで、今まで考えたことを全部なかったことにする必要はない」
遥は相談文を閉じた。
遥「……誰かに『それでいい』って言ってもらうと安心するのは、間違ってないって保証してほしいからなのかな」
蓮司「そういう部分はあるだろうな。選んだあとに責任を持つのが怖いときもあるし、自分だけで決めるのが心細いときもある」
日下部「誰かに背中を押してもらうこと自体は悪くない。ただ、押してもらえなかったら進めない状態が続くなら、自分が何を怖がっているのか考えてみてもいいと思う」
遥「……俺も、誰かに決めてもらえたら楽なのにって思うことがある」
蓮司「決めてもらったら、うまくいかなかったときに、その人のせいにできるから?」
遥「……それもあるかもしれない」
日下部「でも、誰かが代わりに決めても、その結果を全部引き受けてくれるわけじゃないからな」
遥「……うん」
🗝 三人からのことば
遥「誰かに違うことを言われると、自分が考えていたことまで間違いだったように感じることはあると思う。でも、迷ったからって、最初に考えたことが全部嘘になるわけじゃない。誰かの意見を聞いて揺れた自分も、最初に決めた自分も、どっちも自分なんだと思う」
蓮司「人の意見を参考にするのと、人に自分の結論を決めてもらうのは違う。納得できる部分は取り入れればいいし、違うと思う部分は残しておけばいい。全員に『それでいい』って言ってもらえるまで待ってたら、いつまでも決められないぞ」
日下部「決めたことを見直すのは、悪いことじゃない。ただ、反対されたから変えるのか、考えた結果として変えるのかは、自分で確認してほしい。すぐに答えを出せないなら、時間をかければいい。焦って決める必要はない」
相談室の片づけを終えたあと、遥は机の上に置いていた進路希望調査票を鞄にしまおうとした。
第一希望の欄には、少し前に自分で書いた学校名がある。
家から遠い。今の成績で届くか分からない。周りからは、もっと確実なところを選んだほうがいいと言われた。
そのたびに、書いた学校名を消そうと思った。
別の学校なら、失敗しなくて済むかもしれない。
自分の実力を分かっていないと思われずに済むかもしれない。
遥は調査票を取り出し、消しゴムを手に取った。
「……何してんの?」
隣で鞄を持ち上げていた蓮司が、紙を見た。
「いや……こっちの学校、ちょっと難しいかもしれないから」
「それ、誰に言われた?」
「……何人か」
「おまえはどう思ってんの?」
遥はすぐに答えられなかった。
難しいとは思う。受かる自信もない。
でも、行きたいと思ったのは、本当だった。
「……行きたいとは、思ってる」
「じゃあ、今すぐ消す必要はないんじゃないか。受かるかどうかは、これから考えることだろ」
「でも、無理だったら……」
「そのときは、そのとき考えればいい。今から自分で可能性を消しておく必要はないだろ」
遥は消しゴムを机に置いた。
少し離れたところで、日下部が鞄の肩紐を直していた。
「先生に相談して、今の成績でどれくらい可能性があるか聞いてみればいい。難しいって言われたら、何をどれくらい頑張ればいいかも聞けばいい」
「……それで、やっぱり無理だって言われたら?」
「その話を聞いてから、もう一度考えればいい」
日下部はそれ以上、何も言わなかった。
遥は調査票を鞄にしまった。
進路を変えないと決めたわけではない。絶対に受かると信じられたわけでもない。
ただ、誰かに難しいと言われたことだけで、今すぐ諦めるのはやめた。
それだけのことなのに、鞄のファスナーを閉める指先には、少し力が戻っていた。
「で、先生に聞くのはいつ?」
「……明日」
「忘れるなよ」
「分かってる」
「聞いたあと、また迷ったら考えればいい」
「……うん」
二人の言葉に、遥は小さく頷いた。
自分で決めることは、誰の意見も聞かないことじゃない。
誰かの言葉を聞いたあとも、自分の考えを確かめる時間を残しておくことなのかもしれなかった。
コメント
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第39話、読ませていただきました。今回のテーマ、すごく共感します。「自分で決めたことでも、誰かに否定されるとグラッとくる」——これ、ほんと多くの人が経験あるんじゃないかな。特に蓮司の「説明できることと、正しい選択であることは同じじゃない」って言葉が心に残りました。解説しようとすると余計に迷うこと、ありますもんね。あと最後の遥の進路の場面——「今すぐ消す必要はない」って蓮司が止めるシーンが静かに響きました。焦って決めなくていい、その時間の大切さを描いてくれて、温かい気持ちになりました。素敵な回をありがとうございます。