テラーノベル
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体力が切れた、という事実は誰にも止められなかった。膝が折れ、視界が狭まり、息が浅くなる。
それでも終わりにはならなかった。
「ほら、もう無理だって顔してる」
誰かが言い、それに重なるように笑いが広がる。
無理だと分かった瞬間が、合図になったみたいに。
遥は立たされる。
支えられているのか、倒れないように固定されているのか、区別がつかない。
腕は重く、脚は感覚が遠い。
「使い切ったらどうなるか、知ってる?」
そう言われても、返す声が出ない。
誰かが水を差し出す。
飲ませるためじゃない。
口元を濡らすだけで、引っ込められる。
「ほら、回復したフリ」
「まだ動けるでしょ?」
遥は首を振ろうとして、途中で止まる。
動かす力が足りない。
「反応薄いな」
「壊れかけってやつ?」
会話は続く。
途切れない。
遥がそこにいる前提で、でも相手にしない会話。
「さっきより軽くなった」
「中、空っぽなんじゃね」
「これ、持ち運び楽だな」
身体の向きが変えられる。
置き直される。
人ではなく、位置として扱われる。
時間の感覚が溶ける。
何分か、何十分か、もう分からない。
「まだ終わらせないよ」
「だってさ、今が一番つまんない顔してる」
その言葉で、遥は分かる。
期待されているのは、抵抗でも悲鳴でもない。
壊れていく様子そのもの。
(……ここまで来たら)
(止まる理由が、ない)
声は出ない。
でも、意識は落とされない。
「ほら、見て」
「これが“切れた後”」
誰かがそう言い、
それを合図に、また時間が続いていく。
終わらないというより、
終わりを考える必要がない扱い。
遥は、数も、順番も、意味も失ったまま、
そこに置かれていた。
コメント
1件
うわ、これは……読んでいて本当に息苦しくなりました。第37話、遥の「体力が切れた」後の扱われ方が、もう人としての尊厳を奪われていく感覚がひたすら辛い。特に「壊れていく様子そのもの」を期待される、という一文が胸に刺さりましたね。意思や抵抗が無駄だと悟ってしまう瞬間の描写が、すごくリアルでゾッとしました。伏線的に、これがどう繋がっていくのか気になります……。
#読み切り
ruruha
656
ゆうまる
121