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#読み切り
ドアが開く。
相談者は少し迷ってから言った。
「自分の話すると、空気変わる気がする……」
蓮司は椅子を引く。
「どんな話」
「普通のこと。家とか、将来とか。重いわけじゃないのに、急に静かになる」
「そのあとどうなる」
「誰かが別の話に戻す。で、終わる」
蓮司は座る。
「量と長さ、どっちも多いな」
「え」
「一回で出しすぎてる」
相談者は眉を寄せる。
「そんなつもりない……」
「自覚なくてもそうなる。
“自分の話”は他人にとって処理コストが高い」
「処理コスト……」
「聞く側は、理解して、反応決めて、空気も見る。
軽い雑談より負荷が高い」
少し沈黙。
「じゃあ話さない方がいい?」
「違う。分ける」
「分ける?」
「量を分割する」
相談者は黙る。
「一回で全部出すな。
一文で止めろ」
「一文?」
「“俺、家ちょっと面倒でさ”で止める」
「続けないの?」
「続きは相手に渡す。
“何が?”って来たら出す」
相談者は少し考える。
「来なかったら?」
「そこで終わり。
引かれたんじゃなくて、“そこまでの関心”」
間。
「それ、ちょっときついな……」
「きつい。でも事実は見える」
相談者は息を吐く。
「あとタイミング」
「またそれか……」
「重要だからな。
笑いの流れの中で急に深さ変えると止まる」
「やってた……」
「深さ変える前に一言入れろ」
「何て」
「“ちょい真面目な話していい?”」
相談者は苦笑する。
「ダサい……」
「ダサいけど効く。
モードが変わる」
少し沈黙。
「それでも止まったら?」
「正常」
「え」
「止まるのは“聞いてる時間”」
相談者は顔を上げる。
「拒否じゃない?」
「全部が拒否じゃない。
お前が早く引っ込めてるだけ」
間。
「確かに、耐えられなくて戻してた……」
「そこで数秒待て。
誰かが拾うか、拾わないかが分かる」
「拾われなかったら?」
「その場じゃない。
別の人か、別のタイミングに回す」
相談者は小さく頷く。
「自分の話ってさ」
「何」
「出し方ミスると、すぐ浮くな……」
「内容より“出し方”の影響がでかい」
少し沈黙。
「怖いのは変わらないけど」
「いい」
「分けて出すのはできそう」
蓮司は頷く。
ドアの前で立ち止まる。
「引かれるのって、全部じゃないんだな」
「全部じゃない」
ドアが閉まる。
引かれたように見える瞬間は、
ただ処理が追いついていないだけのことも多い。
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