テラーノベル
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部屋に入った瞬間、遥は人として数えられていないと分かった。
椅子は一つ。
座るためじゃない。
位置を固定するための目印。
「動いたらデータ取れないからさ」
誰かが言う。
冗談の声色で。
壁には、紙が貼ってある。
名前じゃない。
番号。
遥の番号。
「前より反応遅いな」
「慣れた?」
「いや、壊れかけてるだけだろ」
会話は続く。
遥を挟まずに。
遥の体だけを話題にして。
(……人じゃない)
(最初から、そう扱われてた)
痛みが来る。
どうやってかは、分からない。
分かるのは、止める権限が誰にも無いことだけ。
「今の声、記録しといて」
「ほら、さっきより出てる」
「やっぱ拒否すると反応変わるな」
拒否。
その言葉が、
罰のトリガーとして使われる。
「嫌って言ったよな?」
「じゃあ次、これな」
理由はそれで十分だった。
遥は、
自分の感覚が
他人の娯楽の指標になっていくのを感じる。
「まだ意識ある」
「すげぇ」
「耐久値高いわ」
褒め言葉の形をした
完全な否定。
(俺が……壊れないから)
(続くんだ)
思考が、
自己嫌悪の形で整列していく。
(ちゃんと壊れれば)
(終わったのに)
「はい、次の条件いくぞ」
「さっきより正直に反応しろよ」
正直、という言葉が
ここでは命令を意味する。
遥は、
自分の声が
自分のものじゃなくなっていく感覚に
静かに沈んでいった。
終わる気配はない。
終わらせる理由が、誰にもない。
ここでは、
壊れるか、壊れかけで使われ続けるか
その二択しか存在しなかった。
#読み切り
ruruha
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ゆうまる
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コメント
1件
読んだ……これは、めちゃくちゃ重い話だった。 「人として扱われない」って、こういうことなんだなって、読んでて胃の辺りが冷えた。 遥が自分の感覚を他人の娯楽の指標にされて、自己嫌悪で思考が整列していくところ、苦しすぎる。 「ちゃんと壊れれば終わったのに」って思考が、もう搾取のループに完全に取り込まれてる証拠だ。 この環境、ここまで徹底して「壊れるか壊れかけで使い続けられるか」しかないって設定、読み応えある。