テラーノベル
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翌朝、夏帆は爽快な気分で目を覚ました。
一年半付き合った恋人に振られたというのに、思ったよりもダメージは少ない。
それもそのはず――夏帆の心はすでに、新しい生活へ向けて動き始めていた。
昨日帰宅してからは、以前買いあさって“積読”になっていた本を片っ端から読み漁った。
テーマはどれも“ミニマリスト”“シンプルライフ”“身軽に生きる”といったものだ。
夏帆は以前から、物を持たずに軽やかに暮らす生活に憧れていた。
理想は、スーツケース二つほどの荷物で引っ越せる身軽さ――そこまでは難しいかもしれないが、本気でそう思っていた。
しかし、駿介と付き合っている間は、その望みは到底かなわなかった。
彼は典型的な“マキシマリスト”。
欲しいものはすぐに買い、コレクションし、そしてすぐ飽きる。
そのせいで部屋は常に物で溢れ、埃をかぶったガラクタたちは、持ち主に見向きもされないまま負のオーラを放っていた。
(あんな暮らしは絶対にしたくない。私はこれから身軽に、シンプルに生きるのよ)
本を読み進めるほど、その思いは固くなっていった。
そして今朝、目覚めた瞬間に決めた。
――いらないものをすべて処分して、引っ越そう。
夏帆はそう心に決めたのだった。
会社へ向かう電車の中で、夏帆は胸が弾んで仕方がなかった。
軽やかな気持ちでオフィスビルに入り、同僚たちと挨拶を交わす。
昨日失恋したとは思えないほど、元気に満ちていた。
席に着いてパソコンを起動していると、誰かがそばに立った。
隣の席の同僚だと思い顔を上げると――そこには結城紗英がいた。
(さっそく来たわね……)
夏帆は、こうなることを予想して心の準備をしていた。
寝取った女は必ず寝取られた女にマウントを仕掛けてくる――そう思っていたからだ。
「藤田さん、おはようございます」
紗英は自信ありげな笑顔で言った。
「おはよう、結城さん」
「あの、ちょっといいですか?」
(それ来た)
夏帆は心の中で呟く。
「ええ、いいわよ」
夏帆は余裕の笑みで応じた。
「じゃあ、カフェスペースで……」
歩きながら、紗英は微妙な表情を浮かべていた。
(昨日、駿介さんに振られたはずなのに……なぜ笑顔なの?)
勝ち誇った気持ちで話したかった紗英は、納得がいかない。
紗英にとって、美人で仕事もできる夏帆は目障りそのものだった。
表面上は仲の良い同僚を装っていたが、心の底では上司や同僚から信頼される夏帆が気に入らなかった。
そこで紗英は、夏帆の恋人・駿介に狙いを定めた。
二人の交際は社内では誰も気づいていなかったが、紗英だけは見抜いていた。
偶然、二人のデート現場を見てしまったのだ。
駿介は社内一の腕利きトレーダー。将来も安泰。
見た目は醤油顔の爽やかなイケメン。おしゃれで背も高い。夫にするには申し分ない。
そして何より、目障りな夏帆から奪うことで自尊心が満たされる。
(それなのに、なぜあんなに元気なの?)
納得できないままカフェスペースに着くと、紗英が口を開いた。
「駿介さんから聞いていると思いますけど……」
紗英が言い終える前に、夏帆ははきはきとした声で返した。
「ええ、全部聞いたわ。でも、私は気にしてないから大丈夫よ。彼と幸せになってね」
「えっ?」
「駿介には結城さんの方がお似合いだもん。末永く幸せにね」
満面の笑みでそう告げると、夏帆は軽く会釈し、自分の席へ戻っていった。
紗英はぽかんとしたまま、その後ろ姿を見つめていた。
席に戻った夏帆は、心の中で自分を褒めた。
(上出来! 大人のいい女を演じられたわ。ふふ、これで次へステップアップできる!)
夏帆は、今日の仕事終わりに上司へ退職届を出すつもりでいた。
午後――
少し年季の入ったマンションの一室で、透也が誰かと電話をしていた。
「新くん、なんで昨日いなかったんだよぉ~」
電話の相手は、透也の義理の弟で、三木谷エステートの社長・三木谷新だった。
「だってお義兄さん、昨日はお店休みですよ?」
「いつも休日出勤してたじゃん。だからいると思ったのに……」
「今は閑散期なんで休みは出てないんです。で、どんな用だったんですか?」
「ん……もう大丈夫なんだけどさ。あ、でも、もしかしたら知人が新くんの店に行くかもしれないから、連絡しておこうって思って」
「知人? 女ですか?」
「うん」
「名前は?」
「知らん」
新は、電話越しでも分かるほど盛大にため息をついた。
「名前も知らない女性に、僕の店を紹介したんですか?」
「そうそう。なんか困ってるっぽかったからさ~」
「いや、優しさの方向性おかしいですよ……。で、その方は部屋を探してるんですか?」
「みたいだね」
「どんな人なんですか?」
「えーと、すらっと背が高くて、目鼻立ちくっきりのエキゾチック美人。髪は長くてゆるパーマで――」
透也が言い終える前に、新が即ツッコミを入れた。
「それって、お義兄さんが好きな女優・荒木優子と完全一致じゃないですか」
「そうそう! まさにそんな感じ」
「いやいやいや……そんな美女とどうやって知り合ったんですか?」
「新くんのおかげかな~?」
「は?」
「昨日いなかったから……」
「ちょっと意味が分からないんですけど!?」
「まあまあ、細かいことはいいでしょ」
諭すように言いながら、透也は時計をちらりと見た。
「おっと、そろそろ出勤の時間だ」
「午後から出勤なんて、いいご身分ですよね~。あ~、羨ましい」
「くっくっ、本心じゃそう思ってないくせに」
「うっ……バレた。まあ、不規則な生活なんですから、体壊さないでくださいよ」
「うんうん、ありがと。じゃあ、またね~」
透也は電話を切ると、鼻歌まじりに仕事へ行く準備を始めた。
瑠璃マリコ
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桃下結衣
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コメント
27件
夏帆ちゃん、カッコ良い!😎👍 そうそう!😁👍 要らないダメ男駿介なんか浮気相手にくれてやって、スッキリしちゃいましょう!! 透也さん、 普段はご多忙なのかな…? 「ゆるふわ」は、オフの時だけなのかもしれませんね〜🤔 夏帆ちゃんとの再会が楽しみです🎶
ミニマリスト&してやったりの夏帆ちゃん👍 元彼と🗑️を捨てて紗英の鼻っぱしを折って新生活に向かって前進中✨ そして夏帆ちゃんがゆるふわイケメン透也さんの好みのタイプとは🥰💕 2人の再会の時はいつ✨❓転職先かな⁉️
夏帆ちゃんカッコイイ😎 謎のイケメンは透也さんね φ(..)メモメモ 夏帆ちゃんがタイプの女性とは… (*´艸`) 夏帆ちゃんの新生活 そして2人の再会♡ これから楽しみです🎶