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#闇
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ドアが開く。
相談者は席に座る。
「連絡したい人がいるんだけど」
蓮司は向かいに座る。
「すればいい」
「だから、それができないんだって」
「何で」
「今送ったら迷惑かなって」
「忙しいかもしれない?」
「そう。それに、急に連絡したら変かなとか」
少し間が空く。
「用事は?」
「特にない」
「じゃあ何て送る」
「それが決まらない」
蓮司は少し考える。
「『元気?』じゃ駄目なのか」
「それだけ送るの、何か怖い」
「何が怖い」
相談者はしばらく黙った。
「返事が来なかった時」
「なるほど」
「既読とか未読とか、そういうのを気にしたくない」
「でも送らなかったら?」
「ずっと気になる」
「じゃあ、送っても気になるし、送らなくても気になる」
「……そう」
蓮司は少し笑った。
「面倒だな」
「自分でもそう思う」
静かな時間が流れる。
「でも、連絡って相手を拘束することじゃないだろ」
相談者は顔を上げる。
「どういうこと?」
「送るのは自分の行動。返すのは相手の行動」
「うん」
「そこを一緒にすると重くなる」
相談者は少し考える。
「連絡したら、返事まで求めてる気がしてた」
「実際には?」
「……送っただけ」
「そう」
「返事をするかどうかは相手が決める」
「その通り」
少し間が空く。
「でも、返事がなかったら傷つく」
「それは仕方ない」
相談者が少し驚く。
「仕方ない?」
「傷つかない方法を探すより、傷つく可能性があっても連絡したいと思った自分を否定しない方がいい」
相談者は黙った。
「返事が欲しいと思うこと自体は悪くない」
「うん」
「ただ、返事がない=嫌われた、まで一気に決めない」
相談者は小さく息を吐いた。
「そこまでセットにしてた」
「勝手に続きを書いてたんだな」
「またそれか」
「お前、続きを作るの好きだな」
相談者は少し笑った。
「悪い想像ばっかり」
「だったら今回は、事実だけにする」
「事実?」
「『送りたいと思ったから送った』」
「それだけ?」
「それだけ」
少し静かな時間が流れる。
相談者は立ち上がった。
「送るかどうかは、家に帰ってから決める」
「今すぐじゃなくていい」
「でも、送りたいと思ったことくらいは認めてみる」
蓮司は頷いた。
「それなら十分だ」
相談者はドアの前で振り返る。
「連絡するって、相手の返事まで背負うことじゃないんだな」
「そこまで背負ったら、誰にも連絡できなくなる」
相談者は少し笑って、部屋を出ていった。
ドアが閉まる。
「迷惑かな」と考えすぎて、自分から動けなくなることがある。
でも、連絡したいと思うことと、相手に返事を強制することは別の話。
相手の反応まで決めることはできないからこそ、自分の気持ちと相手の選択を、別々に考えてもいいのかもしれない。
コメント
1件
うわ、これめっちゃわかる……。「送る前に既に悪い想像を勝手に作ってる」って蓮司の指摘、ぐさっときました。自分も「今送ったら迷惑かな」で何度も止まってる人間なので、めちゃくちゃ共感しました。最後の「返事まで背負うことじゃない」って考え方、すごくシンプルだけど救われるなあ。連絡したい気持ちと相手の選択は別物、って頭ではわかってても心が追いつかない時があるから、こうして言葉にしてもらえると気が楽になります。ruruhaさんのこういう「あるある」を軽やかに描くセンス、好きです。