テラーノベル
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それから一週間が経過した。
超過密スケジュールだった省吾の予定も、漸く一段落した。
今日は面会や打ち合わせの予定は入っているが、外出の予定はなかった。
奈緒は久しぶりにCEO室へコーヒーを持って行った。
すると、省吾は奈緒のコーヒーを待ち構えていたようにすぐに飲み始める。
「うーん美味い! やっぱり奈緒が淹れてくれたコーヒーは最高だな」
省吾は嬉しそうだ。
奈緒が本日の予定を読み上げてから部屋を出ようとすると、省吾に呼び止められる。
「奈緒、ちょっと待って」
省吾は椅子から立ち上がると、傍に来て奈緒が持っていたトレーを机の上に置いた。
そして奈緒を抱き締める。
「!」
突然の事に奈緒はびっくりする。
省吾は奈緒の髪に鼻を埋めると、奈緒の匂いを堪能するように大きく息を吸い込む。
「あっ、あの……」
奈緒は身体を離そうとするが、ギュッと抱き締められていて逃げる事が出来ない。
そこで省吾は少し上半身を離すと、奈緒の瞳をじっと見つめる。
省吾の視線を捉えた瞬間、奈緒は頭の中がクラクラしてきた。
すると次の瞬間、省吾の唇が奈緒の唇に重なる。
省吾のキスは、とても優しいソフトなキスだった。
奈緒がされるがままになっていると、キスは次第に激しさを増してくる。
チュッ チュッ クチュッ
室内にリップ音だけが響いていた。
その音を聞いているだけで、奈緒の身体が火照ってくる。
(誰か来たらどうしよう……)
社内でいけない事をしているという感覚が、余計に奈緒の興奮を掻き立てる。
もちろん省吾も同じ気持ちだった。
しかし今の省吾には溢れる欲望を押し込める事など出来なかった。
ここ最近出張や外出が続き、省吾は奈緒の顔をゆっくり見る暇もなかった。
だから朝一番に奈緒の愛らしい顔を見た途端、こらえきれなくてつい抱き締めキスをしてしまった。
やめなければと思えば思うほど、離れたくなくなる。
それほどまでに、奈緒は省吾を虜にしてしまう。
いつまでもこうしていたい願望に囚われながら、省吾はなんとか理性を振り絞り名残惜しそうに奈緒から離れた。
二人の息遣いは乱れている。
省吾は最後にもう一度奈緒をギュッと抱き締めると言った。
「ごめん……我慢できなかった」
省吾は奈緒の髪に鼻を埋めながら言った。
「奈緒はいい匂いがして離れられないよ」
省吾は困ったように続け様に言うと、漸く奈緒から離れた。
奈緒はうつむいたまま服装と髪を整えると、顔を上げて省吾を見る。
久しぶりに見る省吾は、少し痩せたような気がした。
顔色も悪く、かなり疲れたような顔をしている。
「出張中はちゃんとご飯を食べましたか?」
「おっ、鬼秘書さんのチェックが始まった!」
すると奈緒はムッとしながら真剣な顔で言った。
「ふざけないで、ちゃんと答えて下さいっ」
「ごめんごめん……まあなるべく食べるようにはしていたけど、なんか胃がもたれちゃってさ。外食が続くと胃にくるよね」
省吾は肩をすくめて言う。
「おうちでのお食事は?」
「家? 基本家では食べないよ。家には寝に帰るだけだし」
(そんなんじゃ身体を壊すのは時間の問題だわ……)
そこで奈緒はある事を決心する。
「明日から深山さんが会社でお昼を食べる時は、私がお弁当を作ってお持ちします。ですからそれを食べて下さい」
省吾はポカーンと口を開けたまま驚いていた。
奈緒が強い意志を持って省吾に何かを訴えたのは初めてだったからだ。
「え? いいの?」
「はい。深山さんはご自身の体調管理が全く出来ていないようですから、明日からは私が管理します!」
使命感に燃えた奈緒が鼻息を荒くして言ったのを見て、省吾は笑いをこらえている。しかしどことなく嬉しそうだ。
「実はこの前秘書室で奈緒の弁当を見た時、美味そうだな―って思ったんだよ。だから凄く嬉しいけど、でも本当にいいのか? 奈緒の負担にならない?」
「大丈夫です。一人分も二人分も同じですから」
「じゃあ、お言葉に甘えようかな?」
「では早速明日からお持ちしますので、お昼は何か買いに行ったりしないで下さいね」
「わかったよ、ありがとう、楽しみだな」
「では、失礼します」
奈緒が部屋を出た後、省吾は椅子にドカッと座ってから長い足を組んだ。
それから無意識に顎髭を触りながら、先程の奈緒の唇の感触を思い出していた。
ふわっと柔らかくしっとりとなめらかな奈緒の唇の感触を思い出すだけで、省吾の身体が熱くなる。
そして何よりも奈緒が省吾の身体を心配してくれているのが嬉しかった。
「さて……奈緒にご褒美をもらったから、今日も頑張りますか」
省吾は嬉しそうな笑みを浮かべると、一度椅子に座り直してからパソコンへ向かった。
コメント
19件
奈緒ちゃんも省吾さんのキスに満更でもない感じね😙 奈緒ちゃん特製のお弁当食べて身も心も元気になって✨
省吾さんもう❤️奈緒ちゃん無しでは生きて行けない位❤️❤️奈緒ちゃんの 柔らかい👄の事思うと 体が熱くなるほど💖💖 奈緒ちゃんも省吾さんの体調が心配で奈緒ちゃんの愛情お弁当を提案💐 省吾さん嬉しそう❤️❤️ますますラブモード全開 井上君も恵子さんとこれから❤️な関係楽しみ😊
奈緒ちゃんのお弁当で更にパワーアップ‼️ 仕事も恋も大忙しですね、省吾さん🥰