テラーノベル
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椅子に縛られたまま、悠翔は視線を逸らした。
だが、それを許さない者がいた。
「こっち見ろよ。カメラが寂しがってんぞ」
陽翔の指が、顎を強引に持ち上げた。首が軽く軋む。だが、抵抗はもう筋肉に届かない。
喉の奥で何かが鳴った。言葉ではなかった。ただ、喉が拒んでいた。
「なぁ、悠翔。おまえってさ、黙ってりゃ“健気”だと思ってんのか?」
蒼翔が、背後から椅子の脚を蹴った。ガタンと揺れ、膝の上のペットボトルが一つ落ちた。
蓮翔が素早くそれを拾い、代わりに砂の詰まった袋を積んだ。重みが倍になった。
「“死にたい”とか思ったことある?」
陽翔がそう言った瞬間、悠翔の肩が小さく跳ねた。
「は? そんなに図太く生きてきて、いまさら?」
「……こわい、だけ……」
乾いた声。音が濁っていた。
「なにが怖いの? バレること? 潰されること? それとも、次の動画が“実名タグ付き”で流れること?」
蒼翔が、スマホの画面を悠翔の目の前に突き出した。
そこには、すでに編集された動画の“プレビュー画面”。タイトルは《実験体:Y》
再生回数はまだゼロ。だが、その存在だけで十分だった。
「お前の身体、ほんとに“壊れるとこ”どこかわかんねえからさ」
陽翔が、悠翔の足元にしゃがむ。
そして、靴ごとつま先を思い切り踏み抜いた。
「ッっッッ……!」
歯が鳴る。口が開く。だが、叫びが出ない。
「さすがに声出せよ。カット編集で使えねーじゃん」
蓮翔が、悠翔の後頭部を掌で思い切り叩いた。頭が揺れ、視界が滲む。カメラの赤ランプだけが、無慈悲な灯台のように点滅していた。
「言ってみろよ、悠翔。なぁ、“やめて”じゃなくて、“お願い”って、ちゃんとさ」
蒼翔が、悠翔の指を一本ずつ握る。関節を逆側に、少しずつ。
「お願い……っ、もう、いい……っ、どこでもいいから……いかせて……!」
その言葉が、逆に3人を笑わせた。
「ははっ、なにそれ、どこでもいいから“いかせて”? え、まさかそういう意味? マジか、こいつ」
「ほんと、“口”から壊れてくの、おまえの得意技だな」
「次、そのまま“教授へのメール”で音声添付しとくか?」
頭の中に、砂が詰まる音がする。身体よりも、精神のほうが先に逃げようとしていた。
誰かが、頬を軽く撫でた。それが暴力なのか、哀れみなのか、もう分からなかった。
コメント
1件
うわ、これ…読んでて胸がぎゅってなったよ……。悠翔、もう声も出ないほど追い詰められてて、でも「怖いだけ」って絞り出したとこがすごく切なかった。陽翔たちの「お願いって言えよ」の執拗さが恐怖そのもので、カメラの赤ランプがずっと光ってる感じが画面越しにも伝わってきた。精神的に削られていく描写が生々しくて、読んでるこっちまで息苦しくなった。続きが気になるけど、心の準備が必要な話だった…😢
しずまる@Sくんに卒業式告白!
のまめ
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