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朝の教室は、まだ完全には目を覚ましていなかった。
窓から入る光が白くて、机の角だけがやけに光って見える。
晴翔は、席に座るなりスマホを開いた。
もう癖になっていた。
見たくないのに、見ない方が怖い。
動画アプリ。
ホーム。
おすすめ欄。
【友達が離れる時に見せる行動】
晴翔の指が止まる。
まだ朝だ。
何も起きていない。
なのに、“もう起きる前提”みたいな文章。
「また見てる」
横から声。
瀬那だった。
眠そうな目。
でも、その奥は昨日より硬い。
「……これやばいって」
晴翔は画面を伏せる。
「いやでもさ」
「でもじゃねぇ」
瀬那は、小さく息を吐く。
「昨日の時点で気づけ」
「何に」
瀬那は一瞬黙る。
そして、
「当てに来てる」
教室。
ざわざわしている。
でも、空気が少し違う。
誰かが笑うたびに、一瞬間がある。
一拍遅れる感じ。
その時。
前の席の男子が、スマホを机に置いたまま言った。
「なぁ」
「ん?」
男子は、少し迷ってから言う。
「昨日さ」
「うん」
「美玲のやつ……」
教室の空気が、ほんの少し止まる。
「ちょっと……当たってたよな」
晴翔の背中に、嫌な汗が流れる。
美玲。
昨日のおすすめ。
【学校を休み始めた人の一日】
そして今日。
美玲は来ていない。
偶然。
そう思いたいのに。
瀬那が、机を軽く叩いた。
「言うなよ」
小さな声。
でも鋭い。
「それ言った瞬間に寄る」
男子は困った顔をする。
「寄るって何だよ」
瀬那は答えない。
その時。
ブッ。
晴翔のスマホが震えた。
無意識に開く。
もう反射だった。
おすすめ欄。
更新。
【“昨日言われたことが気になる日”の特徴】
晴翔の呼吸が止まる。
「……は?」
小さく声が漏れる。
瀬那が、スマホを覗き込む。
その瞬間。
瀬那の顔から、色が消えた。
「やばい」
「何」
瀬那は、画面を指でなぞる。
次のおすすめ。
【“自分が噂されている気がする”時の思考パターン】
「もう始まってる」
「何が」
瀬那は、ゆっくり顔を上げる。
「お前の考え方、全部読まれてる」
その瞬間。
教室後ろ。
小さな笑い声。
「なんかさ」
「最近あの二人、変じゃね?」
晴翔の心臓が跳ねる。
まただ。
美玲の時と同じ。
“おすすめ通りの空気”。
瀬那が、晴翔の腕を掴む。
「見るな」
「でも」
「見るなって」
ブッ。
また通知。
今度は瀬那。
晴翔が見る前に、瀬那がスマホを伏せる。
でも。
遅い。
瀬那の指が震えている。
「……くそ」
「何出た」
瀬那は答えない。
代わりに、小さく言う。
「お前といるの、まずいって出た」
教室の音が、一瞬消えた気がした。
藤塚 太陽
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けだま15号🍓🐾໊
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