テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
361
朝の教室は、まだ完全には目を覚ましていなかった。
窓から入る光が白くて、机の角だけがやけに光って見える。
晴翔は、席に座るなりスマホを開いた。
もう癖になっていた。
見たくないのに、見ない方が怖い。
動画アプリ。
ホーム。
おすすめ欄。
【友達が離れる時に見せる行動】
晴翔の指が止まる。
まだ朝だ。
何も起きていない。
なのに、“もう起きる前提”みたいな文章。
「また見てる」
横から声。
瀬那だった。
眠そうな目。
でも、その奥は昨日より硬い。
「……これやばいって」
晴翔は画面を伏せる。
「いやでもさ」
「でもじゃねぇ」
瀬那は、小さく息を吐く。
「昨日の時点で気づけ」
「何に」
瀬那は一瞬黙る。
そして、
「当てに来てる」
教室。
ざわざわしている。
でも、空気が少し違う。
誰かが笑うたびに、一瞬間がある。
一拍遅れる感じ。
その時。
前の席の男子が、スマホを机に置いたまま言った。
「なぁ」
「ん?」
男子は、少し迷ってから言う。
「昨日さ」
「うん」
「美玲のやつ……」
教室の空気が、ほんの少し止まる。
「ちょっと……当たってたよな」
晴翔の背中に、嫌な汗が流れる。
美玲。
昨日のおすすめ。
【学校を休み始めた人の一日】
そして今日。
美玲は来ていない。
偶然。
そう思いたいのに。
瀬那が、机を軽く叩いた。
「言うなよ」
小さな声。
でも鋭い。
「それ言った瞬間に寄る」
男子は困った顔をする。
「寄るって何だよ」
瀬那は答えない。
その時。
ブッ。
晴翔のスマホが震えた。
無意識に開く。
もう反射だった。
おすすめ欄。
更新。
【“昨日言われたことが気になる日”の特徴】
晴翔の呼吸が止まる。
「……は?」
小さく声が漏れる。
瀬那が、スマホを覗き込む。
その瞬間。
瀬那の顔から、色が消えた。
「やばい」
「何」
瀬那は、画面を指でなぞる。
次のおすすめ。
【“自分が噂されている気がする”時の思考パターン】
「もう始まってる」
「何が」
瀬那は、ゆっくり顔を上げる。
「お前の考え方、全部読まれてる」
その瞬間。
教室後ろ。
小さな笑い声。
「なんかさ」
「最近あの二人、変じゃね?」
晴翔の心臓が跳ねる。
まただ。
美玲の時と同じ。
“おすすめ通りの空気”。
瀬那が、晴翔の腕を掴む。
「見るな」
「でも」
「見るなって」
ブッ。
また通知。
今度は瀬那。
晴翔が見る前に、瀬那がスマホを伏せる。
でも。
遅い。
瀬那の指が震えている。
「……くそ」
「何出た」
瀬那は答えない。
代わりに、小さく言う。
「お前といるの、まずいって出た」
教室の音が、一瞬消えた気がした。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!