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晴翔の指が止まる。
スマホ画面。
動画サムネ。
夕方の教室。
空席。
そして。
そこへ向かって話しかけている自分。
「……何だよこれ」
喉が乾く。
再生時間。
【03:12】
投稿日時。
【1時間前】
ありえない。
だってその時間、晴翔は授業を受けていた。
でも。
サムネの制服も、教室も、全部今の学校だった。
ブッ。
通知。
【あなたへのおすすめ】
勝手に動画が再生される。
ノイズ。
ザザッ……。
映像が揺れる。
スマホで撮られたみたいな、不安定な画角。
夕方の教室。
誰もいない。
カメラが、ゆっくり後ろの席へ向く。
そこに晴翔がいる。
空席に向かって、何か喋っている。
でも。
音声が異常に小さい。
晴翔は、無意識に音量を上げる。
『……だから』
ノイズ。
『どこ行ったんだよ』
映像の中の晴翔が、空席を掴む。
必死みたいに。
『お前いただろ』
その瞬間。
動画のコメント欄が流れ始める。
『誰と話してるの?』
『怖』
『一人でやってる?』
『この人ずっと空席見てる』
『精神系?』
晴翔の呼吸が浅くなる。
違う。
違う。
そこには瀬那がいた。
本当に。
なのに。
動画の中には、誰も映っていない。
その時。
動画内の晴翔が、突然カメラを見る。
晴翔の背筋が凍る。
画面越し。
目が合う。
動画の中の晴翔が、小さく呟く。
『お前も消される』
ブツッ。
動画停止。
真っ暗になった画面に、晴翔自身の顔が映る。
青ざめている。
その瞬間。
教室の扉が開いた。
「まだいたんだ」
女子の声。
美玲だった。
晴翔は反射的にスマホを伏せる。
美玲は気づいていない。
普通の顔。
普通の声。
「最近ほんと残るね」
「……うん」
声が掠れる。
美玲は少し笑う。
「なんかさ」
間。
「大丈夫?」
晴翔は返事ができない。
“普通の心配”。
なのに。
今はそれすら怖い。
美玲が机にもたれながら言う。
「最近、変な感じするし」
「変?」
「なんていうか」
美玲は言葉を探す。
「一人でいること増えたよね」
その言葉が、胸に刺さる。
違う。
一人じゃない。
そのはずなのに。
晴翔は、思わず口に出していた。
「瀬那いたじゃん」
美玲の動きが止まる。
「……誰?」
また。
その瞬間。
ブッ。
スマホ通知。
おすすめ欄。
勝手に更新。
【“存在しない人物への執着が強くなった場合”】
次。
【“観測者が孤立するまでの平均時間”】
美玲の視線が、少しだけ曇る。
「晴翔」
小さい声。
「本当に大丈夫?」
その言い方が。
まるで。
“壊れ始めた人”を見るみたいだった。
晴翔は、ゆっくり立ち上がる。
「……俺、おかしくないから」
でも。
言った瞬間。
自分でも、少しだけ自信がなくなった。
教室後ろ。
夕方の窓ガラス。
そこに映る教室。
晴翔と美玲。
二人だけ。
なのに。
一番後ろの席だけ。
誰かが座っているみたいに、椅子が少し沈んで見えた。
コメント
1件
読了しました…🥀 「お前も消される」のところ、ぞっとしました。動画の中の晴翔が画面越しに目を合わしてくるの、怖すぎてスマホ落としそうになった… それに美玲が「誰?」って言った瞬間の、空気の変わり方。あれ、めっちゃ重かったです。 最後の椅子が沈んで見える描写、あれ、まだ誰かいるってこと…? さすがに心臓に悪いです… 丁寧に怖がらせてくる書き方、すごい好きです。ruruhaさんの表現、ちゃんと受け止めました🌙