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ドアが開く音がして、少女がゆっくり入ってきた。椅子に腰を下ろすと、机の端を両手で握りしめ、俯いたまま声を落とす。
「……私、いつもひとりなんです。学校でも、家でも。友達と話すときだって、なんとなく壁を感じて。……誰とも本当につながれてない気がする」
蓮司は少しの間、黙って彼女を見ていた。
ペンを回す手を止め、ため息のように言葉を吐く。
「……孤独ってやつは、痛いくらいに分かる。人の声がしてても、自分だけ透明になったみたいで……余計に寂しくなるんだよな」
彼女は驚いたように顔を上げる。
「……蓮司くんも、そういうことあるんですか」
「あるさ。飄々としてるとか言われるけど、オレだって輪の外にいる感覚は味わった。笑ってても、心の中では“ここに居場所なんてない”って思ったこともある」
彼女の目が少し揺れる。
蓮司はゆっくりと続ける。
「でもな、孤独を感じるってことは、それだけ“つながりたい”って気持ちがある証拠だ。何も求めてなけりゃ、寂しいなんて思わない。……だから、その感覚は間違いなく生きてる証なんだ」
「……生きてる証」
「そう。孤独は消えないかもしれない。でも、誰かと一瞬でも分かり合えたとき、その孤独が少しだけやわらぐ。それを繰り返すうちに、居場所って少しずつできていくんだと思う」
彼女は深く息を吐き、握っていた手を少し緩めた。
「……少し、楽になった気がします」
「ならよかった。孤独を抱えてること自体が、お前の弱さじゃなくて、人と関われる強さの裏返しなんだから」
部屋を出ていく彼女の背中は、ほんの少しだけ軽くなって見えた。